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Photo byotohai

りんご右折 #毎週ショートショートnote

    井ノ口 人

     ある日、辺蔵へんぞうが帰宅すると妹の暮子ぐれこが泣いていた。継母ままははが「兄妹きょうだいを捨ててこい」と父に詰め寄る姿を見てしまったのだ。
     週末、父は兄妹きょうだいを山奥へ連れ出した。一本道の先のりんごの木を右折、森を奥へ奥へと進むと谷川に吊り橋が掛かっている。父は二人を橋に誘いざない、隙をみて突き落とそうとした。だが気配けはいを察した辺蔵へんぞうに身をかわされ、谷底に落ちていった。
     辺蔵へんぞうと暮子ぐれこは、長い道のりを歩き家に戻った。そして「父さんはどこかに行った」と頑かたくなに語り続けた。
     数年後。継母ままははに多額の保険金が入った。継母ままははは兄妹きょうだいを下僕の如く扱い、気儘きままな暮らしを続けた。
     暮子ぐれこが16歳になると、継母ままははは暮子ぐれこを地元の名士に嫁がせようと画策かくさくを始めた。
     やがて秋を迎え、辺蔵へんぞうと暮子ぐれこは継母ままははをハイキングに誘った。「りんごの木を右折して森に入ると吊り橋があるんだ。そこからの眺ながめが美しいんだ…」
    その日から継母ままははの姿を見たものは無い。
    辺蔵へんぞうと暮子ぐれこは二人で洋菓子屋をはじめ、いつまでも仲良く暮らした。

    (410文字)
    たらはかに様の企画に参加させていただきます。シンプルが故に難しいお題でした。教えていただいたので、ルビ付きです。

     
     
     
    田舎の人。Jラップ、シティポップ、芸人ラジオ、韓国映画など好きなヒマ人。韓国語学習に取り組んでいきます。2025年9月20日、日記のようなものを開始。股関節のリハビリ中。

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