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嫉妬した夜【随筆】

    今日、新たに見つけた才能の塊。
    天才的な世界観に嫉妬した。

    こんなにたくさん感じているのに、言葉が出てこない。
    焦り。不安。嫉妬で気が狂いそうだ。

    天才的な才能を前にひれ伏すしかなくて。
    続けてきた努力の影を感じるたびに、何もやって来なかった自分を呪い殺す。

    創作の海に溺れている私は、手足を必死に動かしもがき続けている。
    刻一刻と深淵へ堕ちていく身体。
    必死に足掻き続けている頭。
    白い光が遠く、暗闇がようこそと手招きしている。

    このまま深淵に身を委ねればどんなに楽だろうか。

    しばしの沈黙に世界が一瞬止まった気がした。
    力が抜けた瞬間、一頭のイルカが私の目の前を横切っていく。
    私はそっと瞳を閉じた。


    とても心地の良い波の流れの中にいた。
    あったかくて優しい光が瞼の裏を通ってくる。

    「もうすぐそこまで来てるよ」
    誰もいない海から声が聞こえた気がした。
    声の主が誰なのか、瞼が重くて確認できないけれど。
    暖かく柔らかい声に委ね、私は体の力を緩めていた。

    「力を抜いて。そう、いい子ね」
    ぐいぐい持ち上げられる感覚。
    通り過ぎていく波が肌を優しく撫でる。

    ピピピピピ
    この世界に似つかわしくない電子音が頭の上から降り注ぐ。
    ふわりと瞼が開くと、いろんな緑色が飛び込んでくる。
    私のお気に入りのデスクと、書きかけの物語。

    そうだ。
    今の気持ちをそのまま吐き出してみよう。


     
     
    失くした音を探す旅の途中で拾い集めたもの、名前のないものたちを綴っています。

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