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ハス/天国に似た場所【花物語9】


    夕日に照らされた蓮の畑は、
    まるでこの世の景色では無いようだ。


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    見渡す限りの蓮畑。

    梅雨の明けた日の、
    湿気を伴う暑気の中、
    視界を覆う蓮の葉とツボミ。


    今朝はどの花も、
    美しく開いていたが、
    午後になると花はまるで
    眠るかのように、また蕾む。


    この蓮園も、最近は有名になり、
    遠くから写真愛好家たちが、
    カメラを担いで集まってくる。

    明け方に開く花を撮ろうと、
    まだぬかるむ道路や畔に、
    寝そべりながら狙うのは、
    明け方の透き通った空に向かい、
    花開いた、天国の大輪。


    そのベストショットを得るために、
    彼らは今年も、
    早朝からこの山奥の
    蓮園まで集まるのだ。


    「だから、この時間は空いてるの」

    「そうなんだ」

    「花はひとつも開いてないけどね」

    「でも、ツボミも綺麗だ」

    「やっぱり咲いてる方が綺麗ね」

    「そりゃそうだろうけど」

    「ねぇ、知ってる?」


    そう言うと、君は蓮畑の水を、
    手のひらで汲み、蓮の葉に掛けた。

    「わっ!」

    僕は思わず声が出た。
    水はまるで、ビー玉のように
    丸い煌めく玉となり、
    蓮の葉からコロコロと、
    転がって落ちた。

    「ね?凄いでしょ?」

    君はイタズラっぽく笑い、
    また水を手で掬う。

    その近くで、
    トノサマガエルがピョンと跳ねた。


    今度は大きな葉を摘み、
    こぼれないように水を注ぐ。

    水はまた、丸い玉となり
    葉の上をコロコロ回った。


    「この葉っぱの構造をヒントに、
    傘や雨合羽の撥水構造を作ったの、
    凄くない?」


    まるで自分の手柄のように、
    君はそう言って、広い蓮園を
    くるりと見渡した。


    「たかが花、されど花ってね?」

    「人間の知恵なんて、
    自然には全然敵わないよね」

    「そうだね」

    「こんなウンチクつまんない?」

    「いや、面白いね」

    「カエルにキャーキャー
    言う子の方が、きっと可愛いよね?」

    「そんなの好き好きだろ?」

    「好き?」


    ハッ?!

    しまった!!


    思わずこぼれた僕の心が、
    コロコロ転がり、君へと落ちた。


    植物のウンチクが多くて、
    カエルが平気でも、
    僕は君のそんな所が・・・


    「好きなんだ」


    まるで蓮のツボミみたいに、
    君の頬がピンクに染まる。

    ずっと雨だった昨日までの空が、
    今日はオレンジに染まったように。


    見渡す限りの、蓮の園。


    そこはまるで、
    この世に現れた天上の花園。


    蓮のツボミの只中に一輪、
    君の笑顔だけが・・・咲いた!



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    ※※※ 『花物語9』了 ※※※


    #花物語
    #蓮
    #蓮の花苑
    #姫路市
    #今日の一枚



    『花物語』シリーズ ↓






     
     
    肩書ナシだが文歴長い還暦女。 アニメ、漫画はベテランヲタク。 三十代から同人作家として熱く 活動するも、推しの死ショック などから引退😢 しかし、表現への想いやまず noteと出会って創作を再開。 主に田舎暮らしを語るエッセイと、 オリジナルSSなどを書きつつ出版に向け勉強中!

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