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マりントクック、芋えない䞖界の拍動 / ニュヌゞヌランド

    息をのむ絶景の䞭で、私は、この芖界の先に隠された「目には芋えない䞖界」の拍動を、党身で感じ取っおいた。

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    ニュヌゞヌランド最高峰、暙高3724mを誇るマりントクック。先䜏民族マオリの蚀葉で「アオラキ雲を突き抜ける山」ず呌ばれるその峰は、マりむの神話に登堎する背の高い少幎の名に由来する神聖な山だ。この日私は、仲間たちず、この山の登山口ぞ向かっおいた。

    道の途䞭、私たちはアオラキ/マりントクック囜立公園ビゞタヌセンタヌぞ立ち寄った。通内には、怍物や鳥たちを描いた矎しいステンドグラスが食られ、これから始たる旅ぞの期埅を静かにかきたおおくれた。

    この先に䞀䜓どんな景色が埅っおいるのだろうか。色鮮やかなガラスの奥を眺めながら、私は胞の高鳎りを感じおいた。

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    ビゞタヌセンタヌからの景色ずステンドグラス

    絶え間ない埪環

    暙高765mにある登山口から、2200段におよぶ果おしない階段を登る。

    息を切らしお歩を進めるに぀れ、芖界を遮っおいた朚々は次第に姿を消し、倪陜がじりじりず照り付ける。バックパックの重みが、肩にずしりずのしかかる。

    やっずの思いで暙高1300m付近のセアリヌタヌンズSealy Tarnsぞず蟿り着いた。そこには、数億幎の氷河が削り出した圧倒的な颚景が、剥き出しのたた広がっおいた。

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    南緯43床。南極から吹き付ける冷たい颚は、この土地の森林限界をわずか1300mの高さにたで抌し䞋げおいる。その過酷な自然が、目の前に広がる寡黙な䞖界を䜜り出しおいる。私は倧きく息を吞い蟌んだ。

    時折、ごごごっず倧地に響く地鳎りのような音ずずもに、氷河の䞀郚が厩れ萜ち、遠くで癜煙が䞊がる。

    山肌の雪は、䞀幎䞭解けるこずのない「䞇幎雪」ずも呌ばれおいる。しかし、氞遠に静止しおいるかのようなその雪も、こうしお雪厩ずなっお山を䞋り、川に溶け蟌み、絶え間ない埪環を繰り返しおいる。

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    谷底を流れる穏やかな川は、癜く濁ったタヌコむズブルヌに染たる。
    雪厩ずずもに氎に混じる埮现な岩肌の粒子が、倪陜光に含たれる赀や黄色の波長を吞収し、青や緑の光だけを乱反射させおいるのだ。

    いた、目の前に広がる景色は、倪叀の昔から移り倉わる悠久の時を、ただひたすら倉わるこずなく芋぀め続ける傍芳者のようにそびえ立っおいる。しかし、その裏偎では、刻々ず新たな呜ぞず生たれ倉わり、新陳代謝を続けおいるのだ。私の人生もこんな颚に、毎日繰り返される単調な日々の䞭で、䜕かが倉わり続けおいるのだろうか。


    調和するケア

    雪厩の蜟音の傍らで、ニュヌゞヌランドのアむコニックな鳥、ケアKea /ミダマオりムが、甲高い鳎き声を響かせお優雅に県䞋を舞っおいた。

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    広倧な自然の懐に包たれたケアは、数日前に街の動物園で芋たものずは、たるで違う生き物にみえた。

    閉ざされた檻の䞭で、ただ耳を刺すようにうるさく響いたあの甲高い声が、この峻厳な枓谷で鮮やかに反響し、䜙韻ずずもに吹き抜ける颚の䞭ぞ消えおいく。䞍自然なほど鮮烈にみえた矜根の極圩色は、無数の色圩が折り重なる自然ず違和感なく調和する。

    剥き出しの赀い岩肌、苔むす深緑、空の青、雪の癜、草朚の黄浅緑。 この土地に立っお初めお、圌らが攟぀音や色圩、そのすべおに宿る進化の意味が腑に萜ちた。動物園ずいう、誰かに切り取られた「断片」に觊れただけでは、決しお気づくこずのなかった䞖界だ。

    倉えるべきは自分の本質ではなく、自らを眮く「堎所」なのかもしれない。そういう考えもある。

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    ケアは高い知胜を持ち、䞖界で唯䞀高山垯に生息するオりムだ。 氷河期の到来ずずもに、この山に䜏む生き物の倚くは、凍お぀いたこの地を去った。しかし、ケアの先祖たちはこの高地に留たるこずを遞び、過酷な環境に適応しながら、今日に至るたで皮の生呜を繋いでいる。

    圌らがこの厳しい環境で、自らの知性ず適応力によっお手に入れたもの。それは「圧倒的な自由」なのだず私は思う。私は今、優雅に舞うケアたちの孀高の生き様を、目の前で芋せ぀けられおいるのだ。圌らは私に問いかける。私はいた、その堎所で満たされおいるのか、ず。

    地鳎りのような雪厩の蜟音。ケアの艶やかな鳎き声。そしお矜根を倧きく広げたその姿が、この雄倧な景色に溶け蟌んでいく感芚は、いたも私の蚘憶に、深く刻たれおいる。


    そこにあるもの

    この日は、暙高玄1800mにあるハむカヌ向けの山小屋、ミュヌラヌハットMueller Hutに泊たるこずになっおいた。この蟺りたで登っおくるず、怍物は完党に姿を消しお、岩石地垯ぞず倉わる。岩肌には雪が残り、ぐっず気枩が䞋がっおくる。

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    この堎所は囜際的な星空保護区になっおいお、私はここで芋る満倩の星空を䜕よりも楜しみにしおいた。しかし、倜が近づくに぀れお、雚が降り始め、私はひどく萜胆した。

    共に登っおきた仲間たちは、すぐに心を切り替えお「残念だけど、あきらめる」ず就寝の支床を始めおいた。しかし、私はどうしおも燻る気持ちを消せず、薄暗いスペヌスで、静かに撮圱機材を準備しおいた。

    出発前に䜕床もシミュレヌションを重ね、この倜のためにず自分なりに厳遞した䞉脚、レンズ、レンズフィルタヌ。䞀぀ず぀パヌツを組み立お、星空甚のセッティングに倉えおいく。ここたでの長い道のりを、この機材を背負い、やっずの思いで登っおきたのだ。その努力も、費やした時間も、すべおが雚に流されおいくようで、私はただ惚めだった。

    自然が盞手なのだから、圓然こんな日もある。しかし、私はい぀の間にか、蚈算された蚈画ず期埅されるリタヌンずいう効率䞻矩に犯されおしたっおいた。

    小屋に響く容赊のない雚音ず、䜓に残る疲劎が、陰鬱な心に冷たく染み蟌んでいく。雚が止む気配はない。私のこの行動に、䞀䜓䜕の意味があるのだろう。党く合理的ではない。それでも手を止めるこずはできなかった。

    その様子を芋おいた䞀人の女性ハむカヌが私に声をかけおきた。
    「䜕を撮圱するの星空」
    「  そうだよ。でも、この倩気じゃ無理だよね。分かっおる。でも、どうしおも諊めきれなくお」
    私が自虐的な面持ちでそう答えるず、圌女は気の毒そうに、ゆっくりず二回うなずいた。
    䞍意に、私たちの䌚話を聞いおいた別の男性ハむカヌが口をはさんできた。
    「倧䞈倫さ。昚日だっお倜は雚が降っおいたんだ。でも深倜、倖ぞ出おみたら  晎れおアメヌゞングな空が広がっおたよ」

    「  ほんず」
    私の心にぱっず明るい垌望が灯った。
    「そっか、そうだね。ありがずう。深倜にもう䞀床トラむしおみるよ」

    いた、この空は分厚い雚雲に芆われおいる。 けれど、党おの星がこの䞖から消え去った蚳ではない。私は悲芳的になりすぎおいた。雚雲の向こうには、この瞬間も、幟千の星たちが存圚しおいる。圌の蚀葉は、その圓たり前の事実を私に思い出させおくれた。

    光は今、䞀時的に遮られおいるだけだ。山の倩気はすぐに倉わる。ただチャンスはあるかもしれない。私の䞭の惚めな焊りは、い぀しか楜芳ぞず倉わっおいた。

    倜䞭にもう䞀床だけ倖を確認しお、それでもダメなら、その時は心から諊めよう。そうだ、そうするしかないのは初めからどこかでわかっおいた。だが私はそのずき、ようやく自分で自分の心をそこぞ眮くこずができた。


    芋えない䞖界の拍動

    深倜、私ははっず目を芚たした。呚りからは他のハむカヌたちの小さな寝息が聞こえおくる。隣に眠る人を起こさないよう现心の泚意を払いながら、そっず窓を芗き蟌むず、埮かな光がちらりず芋えた。

    はやる錓動を抑えながら、私は足元の機材をそっず掎み、重たい小屋の扉を開けた。

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    そこには、信じられないくらいの無数の星々が瞬いおいた。 しかも、それだけではなかった。凍お぀く倜空の片隅に、肉県では捉えきれない、灰色の埮かな靄もやのような違和感がうごめいおいた。ただの暗闇ではない。宇宙の䜕かがそこにいる。どこか埗䜓の知れない気配だった。

    すぐに䞉脚を立お、シャッタヌを切る。 数秒埌、カメラのモニタヌには、そこにあるはずのない赀い光が映し出されおいた。はじめはカメラの故障を疑ったが、カメラの蚭定を倉えお䜕床やり盎しおも結果は同じだった。

    私の目に映る灰色の靄もやは、重厚なカヌテンのように優雅に揺れながら、少しず぀広がっおいく。私の心に衝撃が走る。鮮烈な「赀」の䞖界。これはオヌロラだ。

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    それは、倪陜の掻発な掻動がもたらした「䜎緯床オヌロラ」ず呌ばれるものだった。倪陜フレアによっお攟出された粒子が、地球の磁堎ず衝突しお攟たれる神秘的な赀い光。波長の長いその色は、人間の網膜では捉えるこずが難しい。

    しかし、カメラが持぀デゞタルセンサヌを通しお、はるか圌方に存圚しおいる倪陜の掻動が、宇宙の壮倧な゚ネルギヌが、そこには確かに写し出されおいた。

    凍えるような寒さの䞭で、私は時間が経぀のも忘れお、倢䞭でシャッタヌを切り続けた。私にずっおは人生で初めおのオヌロラだった。

    もちろん、アラスカで芋られるような、肉県の絶景ではない。しかし、目には芋えない宇宙の営みが、いたここに、確かに存圚しおいる。その拍動を䜓䞭で感じ、私はこれたでに経隓したこずのない高揚感に包たれおいた。

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    私たちは今、誰かに切り取られ、可芖化された無数の情報が、枊巻く䞭を生きおいる。毎日のように抌し寄せる断片の措氎は、私たちの芖界を知らぬ間に芆い尜くしおいく。

    しかし、連続する広倧な䞖界に身を眮いたずき、目の前の景色でさえ、ほんの「衚局」に過ぎないのだず気づく。少し芖線をずらすだけで、その先には、ただ知らない果おしない䞖界が、どこたでも広がっおいる。

    雲を突き抜ける聖なる山、マりントクックは、私にそのこずをもう䞀床思い出させおくれた。

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    Fumiko.H

     
     
    旅動物フォト゚ッセむ 旅や写真を通しお、出䌚った颚景や動物たちの姿・その土地で感じたこずを写真ず文章で綎っおいたす。 Travel, Wildlife, and Nature's Whispers ※むンスタグラムで動物ず旅の写真を投皿䞭

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