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Photo by14mu_sekirei

『人生を置き忘れた私は、沖縄でレンタカーを借りた。』最終話

    人生を置き忘れた私は、沖縄でレンタカーを借りた。

    飛行機が滑走路を走り始める。

    窓の外に、青い海が広がる。

    私はバッグから、あのノートを取り出した。

    最後のページ。

    その女性が残した言葉を、もう一度読む。

    『人は、終わるから悲しいんじゃない。

    誰かに続きを託せるから、生きた証になる。』

    私はノートを閉じる。

    そして、一枚だけ新しいページを開いた。

    ペンを握る。

    ゆっくりと書き始める。

    『このノートを拾ったあなたへ。』

    少し考えてから、続きを書いた。

    『もし、今のあなたが人生に疲れているなら、大丈夫です。

    無理に頑張らなくてもいい。

    沖縄は、答えをくれる場所ではありません。

    でも、もう一度、自分の足で歩きたいと思える場所です。

    私も、そうでした。』

    書き終えると、私はそっと笑った。

    東京へ着いたら、母に会おう。

    仕事も探そう。

    簡単ではない。

    また落ち込む日もあるだろう。

    それでも、一歩ずつ歩いてみよう。

    飛行機が雲を抜ける。

    青い海は少しずつ遠ざかっていく。

    でも、不思議だった。

    沖縄は遠くなるのに、あの場所は私の中で少しずつ近くなっていく。

    あの日、私は沖縄へ逃げてきた。

    そう思っていた。

    違った。

    私は、自分を迎えに来ていたのだ。

    そして、また誰かが沖縄へ来る。

    仕事に疲れた人。

    恋に傷ついた人。

    人生に迷った人。

    その誰かが、あの食堂へ入り、おばぁに会い、ユウナの木へたどり着くかもしれない。

    もし、その人がゲストハウスで一冊のノートを見つけたなら。

    最後のページには、きっと私の文字が残っている。

    『寄り道は、遠回りじゃない。

    新しい人生へ続く道でした。』

    飛行機は東京へ向かう。

    私は窓の外を見ながら、小さくつぶやいた。

    「また来るね。」

    その言葉は沖縄に向けた約束であり、

    未来の自分への約束でもあった。

    ― 完 ―

     
     
    島ノリ|沖縄旅行の「車どうする問題」担当。那覇空港から5分、ミニバン専門レンタカーの東京支店員です。4人以上の沖縄旅を、荷物もスケジュールもラクにする回り方を書いています。宮古島出身。

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