メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo bydongmu

⚪️企画作品|ダレノガレ刑事

    適温より1℃低め

     劇団月影の十二月公演が『ダレノガレ刑事』に決まった。月影先生はお屋敷から稽古場までをLUUPで移動する。源造がストライキなのだ。

    「ダレノガレになんてなれない!」そう叫ぶとマヤはガラスの仮面を稽古場の床に叩きつけた。

    ***

     ダレノガレ刑事はたそがれの旅に出る。列車チームは彼女ひとりだ。船旅チームはプリンセス・セレニティと太川陽介がひび割れから浸水して沈没リタイア。「せめてバスに乗りたかった」そう呟いて涙を浮かべた。

    ***

     行く先々で事件に遭遇するダレノガレ刑事。しかし彼女は何ひとつ解決しない。にも関わらず上の覚えはめでたい。今日の全国署長会議も彼女の噂で持ちきりだった。「ダレノガレ君の後に続く者がねえ…」それが目下の懸案である。

    ***

     ダ レ ノ ガ レ デ カ
     レ ン ジ ツ レ ン ヤ
     ノ ベ ツ マ ク ナ シ
     ガ ン バ リ ス ギ テ
     レ ン ア イ ヒ デ リ
     デ ア イ ハ ツ ネ ニ
     カ ン シ キ ノ キ ミ

     ダレノガレ刑事
     連日連夜のべつまくなし
     頑張りすぎて恋愛日照り
     出会いはつねに鑑識の君

    ***

     砕けたガラスが稽古場の床に散らばったのでみんな爪先立ちになった。そこへ先生が来て、何ですかその屁っぴり腰は! はい、アンドゥトロワ、アンドゥトロワ、パンパンパン、パンパンパン!

    ***

     みんな血だらけ。

    ***

     ダレノガレ刑事はダレノガレ刑事を観ていた。渋谷ヒカリエ、シアターオーブ。たそがれ列車で旅をするダレノガレ刑事、ひび割れた月の下にガラスの舟を浮かべ、数々の事件を未解決のままやり過ごすダレノガレ刑事、まるで自分がヒロインになったような錯覚に、少しくすぐったいような、誇らしいような、ダレノガレ刑事。

    ***

     劇場を出たところで顔見知りの鑑識官とバッタリ遭遇した。彼は少しはにかんで、その瞬間ふたりとも恋に落ちた。これは現実なのかしら。それともまだ夢の続き?

    ***

     そこで太川陽介は目を覚ました。長い夢を見ていた。ぼくが鑑識官、いや刑事になる夢なんだと言った。

     いいえ、あなたは太川陽介になる夢を見たのです。もう一度お眠りなれば本当の夢をご覧になるでしょう。プリンセス・セレニティは言った。

    (おわり)

    🔵913文字


    #シロクマ文芸部
    #十二月
    #3つのお題に空想のひらめきを
    #たそがれ列車
    #ひび割れた月
    #ガラスの舟
    #折詩
    #風まかせ文芸部
    #錯覚
    #なんのはなしですか

    あなたへのおすすめ