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たっすぐの雚【掌線小説/ママによるあずがき】

    ume15

    たっすぐの雚が降っおいた。⁣
    䞀本の線のように、たっすぐ降る雚。⁣
    ざあざあず泣いおいるようだった。⁣
    ⁣
    あなたが生たれおから、たっすぐの雚に打たれるこずなく過ごしおきた私は、その存圚を忘れかけおいた。⁣

    ⁣
     ⁣
    ⁣倕方、嚘がずぶ濡れになっお垰宅した。⁣
    傘を持たせたはずなのに、手に傘はない。⁣
    ⁣
    私は制服を脱ぐよう蚀い、お颚呂の远い焚きスむッチを入れ、それからバスタオルで髪や䜓の氎気を拭き取った。⁣
    ⁣
    「倧䞈倫 傘はどうしたの」⁣
    ⁣
    嚘は䜕も答えず、なんの抵抗もせず、されるがたただった。⁣
    ⁣
    い぀もず様子が違う。⁣
    私は頭をフル回転させ、嚘に䜕が起こったのか、あらゆる可胜性を頭の䞭に䞊べ぀぀次々ず消去しながら䞀぀の答えに蟿り着いた。⁣
    ⁣

    “嚘は初めお、たっすぐの雚に打たれたのだ”⁣

    ⁣
    しばらくしお、バスルヌムから出おきた嚘は顔色は良くなったものの、どこを芋るでもなくがんやりずしおいた。感情の揺れに思考が远い着いおいないのかもしれない。⁣
    私は゜ファに座るよう促し、甚意しおおいたドラむダヌのスむッチを入れる。⁣
    ⁣
    「たっすぐの雚に打たれたのね」⁣
    ⁣
    嚘の䜓がぎくりず動いた。⁣
    ⁣
    「そしお、傘をどこかに忘れた。でも、いいのよ。それで。ママも同じ経隓をしたこずがあるの」⁣
    ⁣
    私は髪を也かしながら話を続けた。⁣
    ⁣
    「たっすぐの雚は、傷぀いた心の悲しみを掗い流しおくれる。だから、぀らいこずや悲しいこずがあっお、自分ではどうしようもなくなったずき、その雚に打たれるこずがある。起こっおしたった出来事は消えないけれど、揺さぶられた感情の方は萜ち着きを取り戻すこずができる  」⁣
    ⁣
    嚘は黙っおいた。⁣
    ⁣
    「ママもあなたず同じ歳の頃、初めおたっすぐの雚に打たれたの。孊校で嫌なこずが続いおいた。孊校に行きたくなかった。ある日の垰り、電車の䞭に傘を眮き忘れおしたったの。ざあざあず雚が降っおいたのに。それで、駅から家たでの道のりを雚に打たれお垰った」⁣
    ⁣
    ロヌテヌブルの䞊に眮いた鏡越しに、嚘は 垰宅埌、初めお私ず目を合わせた。⁣
    ⁣
    「家に着くず、ママのママに、すぐお颚呂に入るよう蚀われた。でも、お颚呂から䞊がっおもただ涙が止たらなくお、私は混乱しおいた。その時、『たっすぐの雚』の秘密を話しおくれたの」⁣
    ⁣
    「秘密」⁣
    ⁣
    「そう。こんな颚に蚀っおいた」⁣
    ⁣
    『若いうちは心が脆くお折れやすいのです。それは成長の途䞭だから仕方のないこず。暹朚の生長過皋の脆さず䌌おいるかもしれたせんね。たっすぐの雚は、心が傷぀いた人の、悲しみを掗い流す力があるのです。そしお、䞀緒に悲しんでくれるのです。そのために雚は味方であるこずを䌝えたくお、傘を忘れるよう仕向ける  。ただ、雚も自分で自圚に降らせるこずはできない。颚が吹くこずもある。ですから、たっすぐの雚に打たれた人は幞運なのです』⁣
    ⁣
    嚘はじっず正面を芋お、䜕かを考えおいるようだった。⁣
    ⁣
    「それから䜕床か同じ䜓隓をした。でもたっすぐの雚は、もう味方だっお理解しおいたから、身を任せた。倧きな音を立おお降る雚の䞭を泣きながら歩いた。そうしたら、気持ちが楜になった」⁣
    ⁣
    ドラむダヌの颚を止め、櫛を通す。⁣
    ⁣
    「たっすぐの雚に打たれお、ママは初めお気づいたの。自分が思っおいるより、心は傷぀いおいるんだっお。たっすぐの雚はあの頃の未熟な私に、それを知らせおくれたんだず思う。もう我慢しなくおもいいっお蚀っおくれたんだず思う」⁣
    ⁣
    嚘が少しだけ眉間にしわを寄せる。⁣
    ⁣
    「だからあなたも、もっずママや呚りの人に甘えおいいのよ。もう我慢なんおしなくおいいの。もっずもっず泣いお、ママに八぀圓たりしたっおいいのよ」⁣
    ⁣
    話し終わる前に、嚘は子どもの頃のように、顔をくしゃくしゃにした。⁣
    ⁣
    「いいのよ。それで」⁣
    ⁣
    嗚咜が、胞に刺さる。⁣
    ⁣
    「぀らいよね」⁣
    ⁣
    ゜ファの背䞭越しに、嚘の肩をゆっくりず、ぜん、ぜん、ず叩き続けた。⁣
    ⁣
    「いいのよ。それで」⁣
    ⁣
    い぀の間にか、私も䞀緒に泣いおいた。⁣
    ティッシュペヌパヌを䜕枚か抜き取り盛倧に錻をかむず、嚘は振り返り、盎接私の顔を芋た。⁣
    ⁣
    私は少し照れくさくお、「今日はね、あなたの奜きなオムラむスを䜜ったのよ」ず笑っお芋せる。⁣
    ⁣
    するず、「き、きのうも、でしょう」ず嚘は途切れながらも、私に抗議した。⁣
    ⁣
    「今日のは、卵がふわふわのタむプ。だっお、あなたオムラむスが奜きだから」⁣
    ⁣
    「昚日、倱敗したから、リベンゞしたい、だけでしょう、ママ」ティッシュペヌパヌで顔を拭いながら、憎たらしいほどの可愛いい笑顔をのぞかせた。⁣
    ⁣
    「蚀うわね。仮に倱敗したずしおも、䜕床だっお挑戊しおもいいのよ。そうでしょう。䞀床や二床、倱敗したからっおなによ。ママは元来、䞍噚甚なのよ」⁣
    ⁣
    「開き盎っおるし。それに䞀床や二床じゃないよね」⁣
    ⁣
    嚘は鏡をのぞき蟌み、前髪がどうずか、也かすのが䞋手ずか、ブツブツず蚀いながら立ち䞊がり、キッチンぞず向かった。⁣
    ⁣
    雚の音。⁣
    氎道の音。⁣
    それから、卵を割る音がした。






    ©2022 ume15

    ヌあずがきヌ
    著者の代わりに、䜜䞭の「ママ」が曞いおみたした

    誰かに悩み事を聞いおもらう。
    それは、問題の根本的な解決にならなくおも、気持ちが楜になったり、荒く波打぀感情を制埡したりするこずに繋がる。

    意倖ず難しいのは、い぀、誰に、そしおどういうタむミングで話すのか、さらには自分の話を真剣に聞いおもらえるか、などだ。本題ずは異なる点での悩みも尜きない、ずいうこずを忘れおはならない。

    小説の䞭では「たっすぐの雚」によっお、それを実珟できたのだけれど、「ママ」が、ふだん悩みを聞いたり盞談を受けたりしたずきに気を぀けおいるこずを、2点だけ曞いおみようず思う。

    私は「 “い぀でも“ 話を聞く」ずいう、守れないかもしれない玄束はしないよう心がけおいる。
    話を聞くために䌚瀟を䌑むわけにも、誰かずの玄束を砎るわけにもいかないからだ。
    ぀たり、話は聞く、けれども “い぀でも“ ずいう条件が難しいのだ。
    もちろん優先させたい気持ちはあるが、こういうずきに限っお、緊急の事態が舞い蟌んだりするものだ。
    その時、「い぀でも、っお蚀ったじゃない」ず思われたら、信頌関係の厩壊である。これを挜回するのにはひどく時間がかかる。

    もう䞀぀は、話をよく聞いたうえで質問をするずいうこず。
    話し手の感情が昂っおいるず、䜕に぀いお悩んでいるのかが読み取れないこずがある。
    そこで、䞀息぀いたずころで、「あなたはそれに぀いおどう思っおるの」ず考えを聞くようにしおいる。
    これを聞かずにアドバむスしおしたうず、垞識を振りかざしおしたうこずになりかねないし、話を聞いおもらいたいだけなのに、䜙蚈なアドバむスをしおしたうこずにもなりかねない。

    か぀お自分は無力だった。
    これたで数々の空回りを繰り返しながら、私はやっず匷くなれたず思う。

    「いいのよ、それで」

    実はこれは、私が、私のママから蚀われた蚀葉。
    自分の蚀動だけでなく、存圚も䞞ごず肯定されたような気がした。

    萜ち蟌んでいた私の心に、浮力を感じさせる䞍思議な蚀葉だった。

     
     
     

    ume15

     
     
    2000文字皋床の小説ず、詩のようなものを曞いおいたす。少し先の未来やパラレル寄りの䞖界での、ちょっず䞍思議な芁玠を加味した、でもおそらく恒久的な、日垞を描いおいたす。すっきりしない読埌感に寛容な方に読んでいただけるず幞いです。

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