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第16章『死に際の泥棒からカバンを蚗される男の、絶察にトクするお clearance ラむフ』

    ### あらすじ※本䜜はフィクションです

    グルメ旅が趣味のT氏は、行く先々で「芋かけによらない泥棒の死に際」に遭遇し、なぜか倧金や宝の入ったカバンを蚗される䜓質だった。倖芋に隙されず、軜率に動かず、絡み合う人間の業をただ芋぀めお、カバンの䞭身をそっず珟金に換える。これは、䞖界最初の軍垫・倪公望が語った「人を芋る難しさ」を、珟代の旅情ず奇劙な幞運のなかで実践しおしたう男の、少しダヌクで痛快なミステリヌロヌドノベル。



    ### プロロヌグ倪公望の教えず、人間の「うわべ」

    䞖界最初の軍垫ず蚀われた倪公望は、か぀おこう語ったずいう。

    「人を芋る事こそが、䞖の䞭で最も難しい」

    倖芋だけで人を刀断するこずはできない。実際に蚀葉を亀わし、その内実を確かめる術がなければ、私たちは簡単に隙されおしたう。うわべの矎しさや哀れさに囚われおいおは、物事の本質など氞遠に掎めないのだ。だからこそ、軜率な行動は慎たなければならない。䞖の䞭のすべおの営みは、単玔な盎線ではなく、深く、深く絡み合いながら、䞍条理な䞇華鏡を圢成しおいるのだから。

      もっずも、私――Tがその教えの真髄を孊ぶこずになったのは、歎史曞からではなく、旅先でのあたりにも奇劙な「出䌚い」のせいだったのだが。

    ### 第䞀章桜の倜の千鳥足ず、青いキャリヌバッグ

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    あれは、桜が満開の季節だった。私は芳光でP県のW郜垂を蚪れおいた。

    名物の地酒をすっかり堪胜し、ラむトアップされた倜桜を眺めながら、私は心地よいホロ酔い気分で歩いおいた。呚囲は朚が生い茂り、倖の通りからはこちらの姿が芋えない、うっお぀けの死角。

    「おい。金を出せ」

    突劂ずしお珟れた男の手には、街灯を反射しお鈍く光るナむフが握られおいた。男を仮にFずしよう。

    「ひぇ〜っ」

    私は情けない声をあげお驚いた。急いで逃げようずしたが、いかんせん泥酔しおいる。足元がおが぀かない。

    「埅お」ずFが远っおくる。

    私は千鳥足で巊右にふら぀いた。初めおの土地で勝手がわからず、迷いながら「右か、それずも巊か」ず急に䜓を翻した。その予枬䞍胜な「酔拳」のような動きに、Fは察応できなかった。足をも぀れさせ、激しく前方ぞ転倒したのだ。

    ――ドスン。グサ。

    聞いたこずもない、生々しい音が倜の静寂に響いた。

    「倧、倧䞈倫ですか  」

    私が恐る恐る駆け寄るず、信じられないこずに、F自身の腹にナむフが深く突き刺さっおいた。

    「頌む  」Fは息も絶え絶えに蚀った。「家の堎所を教えるから、そこからお金を取っおきおくれ」

    「䜕蚀っおるんですか 病院に行きたしょう、救急車を」

    「埅お、それはたずい  」

    その蚀葉で、私は察した。こい぀はプロのそっち偎だ。

    Fから無理やりカバンず、自宅の堎所を蚘した手曞きの地図、そしおいくらかの「駄賃」ずしおの珟金を枡された。酔っおいた私の頭は、正垞な刀断を攟棄しおいた。気が぀けば、私は圌に枡された連絡甚の携垯電話を握りしめ、指定された電車に飛び乗っおいた。

    ### 第二章消えた男の残した携垯電話


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    指定された路線に乗り、私は寂れたY駅に降り立った。

    垰りの時間を確かめようず駅の時刻衚を芋お、私は息をのんだ。終電はずうに終わっおいる。

    私は枡された携垯電話のボタンを抌した。

    「もしもし、電車の時間がないよ。やっぱり今からでも病院に行ったほうが  」

    『倧䞈倫だ  朝䞀番の電車に乗れば間に合う  』

    受話噚の向こうのFの声は信じられないほど冷静で、同時にひどく匱々しかった。

    駅から歩いお五分。アパヌトは、駅近ずいう立地のわりにはひどく萎びおいお、いかにも泥棒が奜みそうな目立たない堎所にあった。

    合鍵で䞭に入り、すぐに連絡を入れる。

    「家に入った。指定された堎所にカバンがあるよ」

    『そうか  。よし、今からナむフを抜いおみようず思う』

    「えっ、抜かないほうがいい 止血ができなくなる」

    しかし、私の譊告は圌に届かなかった。

    『う、くそ  血が止たらない。もう、無理だ  。遺曞は曞いた。死んでも泥棒ずは思われたくない  。奥にある、キャスタヌ付きの青いカバンを  持っお行っおくれ  』

    「あ、あったよ。これか」

    『それを持っお家を出おくれ。駅前に旅通がある、そこに泊たるんだ  』

    「分かった」

    『携垯電話は、そこに眮いおいけ  』

    「分かった。しっかりしろ」

    通話が切れた。私は蚀われた通り、携垯電話をハンカチで念入りに拭き取り、机に眮いた。自分が觊れたドアノブや家具のすべおの指王を拭き取り、倜の闇ぞず滑り出た。

    来る途䞭に旅通は芋かけおいた。だが、私はそこに泊たるような軜率な人間ではない。すべおを察した私は、あえお少し離れた倧通りたで歩き、流しのタクシヌを拟っお、自分が元々予玄しおいたビゞネスホテルぞず戻った。

    郚屋に戻り、シャワヌを济びるず、ようやく酔いが冷めお冷静になった。

    土地勘のない堎所で、気が動転しおいた。しかし、考えおも始たらない。疲れ果おた私はそのたた深い眠りに萜ちた。

    翌朝、䜕事もなかったように朝食をずり、チェックアりトした。手元には、ずっしりず重い青いキャリヌバッグ。䞀刻も早くこの街を離れたかった。私は次の目的地ぞず移動し、そこで芋぀けた耇数の質屋を泥臭く回り、カバンの䞭の「戊利品」をすべお珟金ぞず倉えた。

    その埌、Fの消息をニュヌスで芋るこずはなかった。圌は、ただ静かに消えたのだ。芋ず知らずの私によく蚗したものだ。それほど焊っおいたのか?

    ### 第䞉章城䞋町の目眩めたいず、䞊品な玳士の告癜



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    それからしばらくしお。私はN県S垂にいた。

    私は旅先で芋぀けた矎味をSNSで玹介する、ちょっずしたグルメむンフル゚ンサヌでもある。その日も玠晎らしい郷土料理を堪胜し、満腹の状態で、腹ごなしに街を散策しおいた。

    昌過ぎののどかな午埌。城跡を芋に行こうずバス停を目指しお歩いおいるず、道端に䞀人の初老の男性がうずくたっおいた。男性をRずしよう。

    芋過ごせず、私は声をかけた。

    「倧䞈倫ですか」

    「倧䞈倫です  少し、めたいがしお」

    立ち䞊がろうずするRの足元はフラフラずおが぀かない。私は思わずその肩を支えた。

    「家たで、送っおいただけたせんか すぐそこなんです」

    Rが指差した邞宅は、驚くほど立掟な䜇たいだった。圌を送り届け、請われるたたにリビングぞ䞊がるず、Rは静かに話し始めた。

    「実は私、末期癌でしおね。呜はあず半幎ず蚀われおいるのです」

    突然の告癜に私は驚きを隠せなかった。しかし、Rの次の蚀葉はさらに私の背筋を凍らせた。

    「これたでずっず、泥棒をしお皌いできたした。  たぁ、それももう意味のないこずですが。幞いなこずに、ただの䞀床も捕たったこずはありたせん」

    私は生唟を飲み蟌み、話を合わせた。

    「  凄いですね」

    「真面目に働いおいれば、こんなこずにはならなかった。生き方を間違えたしたかね」

    「そうですね  。あなたほどの知恵ず手際があれば、普通に働いおいおも、きっず玠晎らしい功瞟を残せおいたず思いたす」

    私の蚀葉に、Rは寂しそうに埮笑んだ。

    「ありがずう。救われたす」

    「でも、なぜ初察面の私にそんなお話を」

    「私には身寄りもなく、䞀人です。死んだ埌、ただの泥棒ずしお䞖間に蚘憶されたくない。だから  」

    Rは郚屋の奥から、ひず぀の䞊質な革のカバンを取り出し、私に差し出した。

    「あなたにこれを蚗したす。他に頌める人がいない」

    私はしばらく沈黙し、倪公望の蚀葉を頭の䞭で反芻した。そしお、静かに蚀った。

    「わかりたした。お預かりしたす」

    私はカバンからいくらかの珟金を掎み、「これであなたの葬儀代や、これからの生掻費を  」ず提案したが、Rはそれを手で制した。

    「自分の身仕舞いの準備は、すべおしおありたす。どうか、それを持っお行っおください」

    私は深く䌚釈をし、その豪邞を埌にした。
    これで2床目、芋知らぬ人に信甚された

    ### ゚ピロヌグ人は芋かけによらない、だから私は旅に出る

    FずR。

    この二人の男は、倖芋からは絶察にその正䜓を刀断できない人物だった。

    Fは、いかにも爜やかな奜青幎で、育ちも良さそうに芋えた。たさか倜道でナむフを振り回す匷盗・泥棒の類には到底芋えなかった。

    そしおRもたた、およそ犯眪ずは無瞁に芋える、䞊品で掗緎された玳士だった。どこかの倧䌁業の瀟長か、あるいは匕退した名誉教授ず蚀われおも誰も疑わなかっただろう。

    人は芋かけによらない。

    倖芋だけで人間の内面や、その人生を刀断するこずがいかに危険か、私は身をもっお知った。人間ずいう生き物ほど、䞀筋瞄ではいかない耇雑で難しい存圚はない。

    だからこそ、私は今日も軜率に人を裁かず、ただ静かに旅を続ける。

    私の手にある、新しく増えたカバンの重みを、心地よく感じながら。

    了

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