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未練配達員【毎週ショートショートnote】

    二〇〇八年六月某日。

    石川光太郎、高校二年生。
    高一の冬にバスケ部を辞めて以来、張りのない生活を送っていた。
    部活から解放された「自由」は、持て余すとただ苦しい日々に変わる。
    英文法の勉強をしているときは少しだけ楽しかったが、
    友人たちが部活をして汗を流す姿を見ると、どうしても引け目を感じてしまう。

    ◇

    体育の授業は、バスケだった。
    8歳から続けてきたバスケ。何故、途中で投げ出したのだろう。いや、退部自体には後悔はないのだが、「バスケをしたくないという気持ちになってしまった」という事実が、光太郎に鋭く突き刺さる。

    久しぶりに持ったボールの手触り、匂い、色…。
    光太郎は、半年ぶりに何か燃えるものを感じた。

    「おおお光太郎、すげぇな! 辞めてもバリバリ動けるじゃん!」

    「ドリブルしてる姿は、なんか『配達』って感じだな。無表情で淡々とボールを運んでる」

    クラスメイトの男子が、光太郎に声援を送る。
    光太郎は一切笑わない。輝きを失った目のまま、淡々とプレーを続ける。

    「やっぱり、バスケ部に未練があるんだろうな。ありゃ『未練配達員』だ」



    田原にかさんの『毎週ショートショートnote』に参加いたしました。


    にかさん、いつも素敵なお題をありがとうございます!

    因みに、この「石川光太郎」は、私の小説のシリーズに登場する主人公でして、他にも登場する作品がございます。

    石川光太郎がバスケ部を辞めた直後の心境を書いた作品です。
    よろしければ是非こちらも!!

     
     
     
    役に立たないことを堂々と扱います。 「読んだ人の表情が、少し戻るような文章」を。 職業は塾講師。 家族、仕事、コーヒー、バスケ、昔の思い出など、 どこにでもある日常の中から、少し変で、少し笑えることを書いています。 エッセイと、時々小説。

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