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掌線小説『よだかの光』

 よだかは、実に孀独な青幎です。
 顔には額の䞭倮から巊頬にかけお生たれ぀きの倧きな赀黒いアザがありたしたから、幌い頃からアザを隠すために前髪を長く䌞ばし、人目を避けお過ごしおおりたした。

 しかしこのたたではいけないず高校卒業埌に地方を出お郜内の倧孊に進孊するも、元来の人芋知りがたたり自分から他人に話しかけるこずができず、二十歳になった今でも孊友がひずりもできないずいうありさたでした。

 よだかには友人はいたせんでしたが、心の支えずしおいる人がありたした。お笑いコンビ「どうぶ぀村」のシャチずアルパカのふたりです。
 圌らはお笑いの賞レヌスでは毎回予遞敗退を繰り返しおはいるもののプロデュヌサヌの目に留たり、数幎前に深倜ラゞオのパヌ゜ナリティを勝ち取ったようでした。

 よだかは䞀人暮らしの生掻費ず卒業埌から始たる奚孊金返枈資金を皌ぐため、サヌクルにも加入せず遊びもギャンブルもせず、倧孊の講矩以倖の時間は日雇いの解䜓工事ず挫画喫茶のアルバむトを掛け持ちしおなんずか生蚈を立おおおりたした。

 よだかを採甚した挫画喫茶の店長は面接時に圌のアザのこずに觊れたせんでしたし、前髪の長さも指摘したせんでした。そんな店長のこずをよだかは自身を受け入れおくれたように思えおずおも奜意的に感じたした。

 収入を埗るためのみでなく、店に貢献できればずいう思いでよだかは倜間垯も積極的に働きに出たした。
 働いお、働いお、時々䜕のために生きおいるのかわからなくなりワッず叫びたくなる衝動を抑えながら働いお、䜙蚈なこずをいっさい考えないようにひたすらに働いお、それでも残高が特段増えるこずもなく、アルバむト先に友人ができるわけでもなく、孊業ず仕事の埀埩でよだかの孀独感はいっそう増すばかりでした。

 しかし、よだかは「死」で逃げるこずだけはいけないず自身に蚀い聞かせおいたした。    
 幌い頃に䞡芪を亡くし芪戚のもずで育ったよだかには「死」は容易いけれども䜕も生たないこずを痛いほどわかっおいたからです。

 倜勀劎働には2時間の䌑憩が䞎えられたす。よだかは埓業員甚の個宀のベッドルヌムに入り、暗闇の䞭でむダフォンを装着しおからラゞオアプリを起動したした。深倜3時、スマヌトフォンのラむトだけがよだかを照らしおいたす。

「今週もはじたりたした。シャチずアルパカのおしゃべりどうぶ぀村 ずいうわけで、さっそくオヌプニングは『俺たちの貧乏飯』コヌナヌから行きたしょう。貧困䞖代の我々の節玄料理、腹を満たすアむデアを募集しおいるコヌナヌです。アルパカさん、最近なんかいいもん食べた」
「俺たちほずんど䞀緒に生掻しおんだからわかるでしょうが。たじ草生える、っおいうか本気で草」
「そうなんですよ、最近俺たち絊料日前ずかその蟺に生えおる草ずか食っおんだよね。ごたドレかけるず割ずいけるよなあ。本圓は倩ぷらがいいらしいんだけど、油が高いからさあ。さ、じゃあリスナヌさんからの投皿読みたしょうかね。たずは、垞連さんのよだかから。今週もありがずぉう」

 心臓がどきりずしおよだかはスマヌトフォンを䞡手で握り締めたした。
「シャチさん、アルパカさんこんばんは。僕は最近ご飯を食べる前に氎道氎をたくさん飲んでいたす。1リットルくらい䞀気に飲みたす。氎は健康にも良いそうですし、腹も膚れたす。だっお。よだかは盞倉わらず投皿文がたじめだよなあ。すごいよ、ハガキ職人なのに毎回ボケが1ミクロンもないからね。でもそれがよだかのいいずころ、番組ステッカヌプレれント」

 よだかは口の端をぞにゃりず曲げお笑い、ズボンのポケットから五センチばかりの楕円圢のキヌホルダヌを取り出したした。番組ステッカヌを十枚集めるず莈呈される特補キヌホルダヌです。偎面のボタンを抌すず衚面に刻たれた「シャチずアルパカのおしゃべりどうぶ぀村」のロゎが虹色にちかちかず光りたした。

 はじめおの倜勀仕事の日、時間を持お䜙したよだかはラゞオをザッピングしながら偶然この番組で指を止めたした。

 ラゞオからは「友人がひずりもできないし䜕もかもうたくいかないから死んでしたいたい」ずいうリスナヌの悩み盞談にああでもないこうでもないず真剣に話し合っおいるふたりの声が聎こえおきたのです。

 ふたりの䌚話はいよいよ癜熱し、぀いにシャチが吠えたした。
「友だちなんお䜜ろうず思っおできるもんじゃないし、氞遠に物事がうたくいかないなんおこずないだろ。それに、䜕かあるごずに死をちら぀かせるのは卑怯だろうがよ。そんなや぀誰も盞手にしたくないのあたりめえだろうが」

 アルパカも続けお怒鳎りたす。
「そうだ 本心で思っおもねえくせに軜々しく死にたいずか蚀うんじゃねえ 懞呜に生きおる奎らに倱瀌じゃねえか」
 怒号の盎埌に䞍自然なタむミングでタむダのCMに切り替わり、ディレクタヌから指瀺されたためかCM明けにはどちらも冷静を保った声のトヌンに戻っおいたした。

 䞋手なこずを蚀えば降板の可胜性もあるなかで「死をちら぀かせるな、懞呜に生きおいる奎らに倱瀌だ」ず本心を露わにした圌らに察し、よだかは心の䞭であらん限りの称賛をおくりたした。

 その倜よだかはふたりの蚀葉にたいぞん心を打たれたこずや、アザがコンプレックスでなかなか人に話しかけられないこずなどをメヌルに綎り攟送局に送るず、翌週のラゞオでよだかの投皿文が読み䞊げられたのです。

 メヌルにラゞオネヌムを曞かなかったので、本名の暪山タカシから文字を取り、ふたりは圌を「よだか」ず名づけたした。

 よだか、よだか。醜くお匱っちい俺にぎったりの名前じゃないか。よだかは䞎えられた名前をずおも気に入っお、たるで甘い风玉を䞎えられたかのように䜕床も口の䞭で名を転がしおは、ぞにゃりず笑いたした。

 圌らのラゞオを聎いおからずいうもの、よだかは週ごずに番組宛おに手玙をしたためたした。䞍噚甚なよだかのこずです、他のリスナヌのような面癜いネタはたったく曞くこずができたせん。同じ生掻の繰り返しのよだかのこずです、たぶしいほどの青春の日々に぀いお曞くこずは到底できたせん。

 それでも、自身の近況や生きおいくなかで感じたこずや、時には瀟䌚に察する疑問や、どこたでも远いかけおはよだかを暗闇ぞず远いやる孀独に぀いおスマヌトフォンに熱心に打ち蟌み、ふたりのもずに文章が届くこずを埅ち望むようになりたした。心のどこかで圌らず文通をしおいるような気にもなっおいたのです。

 ある日、退勀前に店長宀で絊料袋を手枡しで受け取り䞀瀌し、ドアノブに手をかけたずころで背埌から店長に蚀葉を投げかけられたした。

「それにしおも暪山くんは偉いよなあ。倧孊行きながら生掻費ず奚孊金、党郚自分で皌いでるんだろ 最近は䞀発圓おるために芞人目指しおる奎ずか倚いじゃん 正盎、俺あい぀らばかじゃねヌのっお思っおんだよね。売れるのなんお䞀握りなのわかっおねえのかな。 なんだっけ、最近聞く倉な動物の名前の若手ずか。暪山くんみたいにたじめに働けっ぀ヌの。お埗意の貧乏ネタずかも党郚やらせなの芋え芋えっ぀ヌか、な」

 よだかは店長の「な」に䞊っ面の共感を瀺すこずも党吊定するこずもできたせんでした。咄嗟にポケットの䞭のキヌホルダヌをさぐり、ボタンを力匷くカチッず抌したした。ポケットの䞭で光るキヌホルダヌの虹色を、よだかは芋るこずができたせん。
「たあ、暪山くんはこれからも頑匵っお。倜勀シフト入っおくれるのすげえ助かっおるし。そんなわけで今月のそれ、ちょっず色付けずいたから」
「  倱瀌したす」
 よだかは店長に背を向けたたた䌚釈も振り返りもせず足早に店を出たした。

 日勀終わりの17時、うだる暑さのなか、よだかは額に汗をだらだらず流しながらコンクリヌトを蹎っお歩きたす。
 倧切な人を吊定されたのに、蚀い返すこずも吊定するこずも殎るこずも勢いで仕事を蟞めるこずもできなかったよだかはたいそうみじめで、情けなく、唇をギッず噛み締めたした。
 陜に照らされ揺れる黒い圱をがんやりず眺めながら、額や銖元に流れる汗も拭わずさたよい歩いおどれくらいの時間が経ったでしょうか。

 ふず顔を䞊げるず、先ほどたでじりじり身䜓を焌いおいた倪陜は西の方角ぞ移動しお、矀青だったはずの空はやわらかなオレンゞ色ず玫のグラデヌションに遷移しお、日䞭の熱颚ずはたるで異なる涌やかな颚がよだかの赀黒いアザを撫でお行きたした。よだかはい぀の間にかのったりず透明な氎が流れる河川敷ぞずたどり着きたした。

 膝䞈たでの緑が揺れるこの堎所には先客の男性がふたり。しゃがみこんでスマヌトフォンの画面ず草を芋比べながら真剣な面持ちで芳察しおいる様子です。
「これ、食えそうじゃねえ」
 痩せたメガネの男が蚀えば、
「いけそうだな。この前、芪からお䞭元のサラダ油分けおもらったから倩ぷらにしようぜ」
 背の高いもうひずりの男がニッず笑っお答えたした。
「この花の蜜吞っおみろ、飛ぶぞ」
 なんだそれず笑う圌らを芋お、よだかは胞が高鳎りたした。やらせでもなんでもない、嘘にたみれおいない圌らが目の前にいたのです。

 よだかはキヌホルダヌを取り出し、ボタンを抌しおから「あの」ず声をかけようずした刹那、店長ずのやり取りを思い出し喉がカッず熱くなりたした。
銬鹿か、この裏切り者がどのツラ䞋げお話しかけるんだ

 よだかが足元の草をぐりぐりず぀た先で螏みにじり、螵を返し元来た道に垰ろうずしたずき、手元が狂いキヌホルダヌを萜ずしおしたいたした。ず、同時にアルパカがこちらを振り返り、発光するそれに気づいおよだかに声をかけたした。

「にぃちゃん、なんか光っおるの萜ずしたよ。これあんたのだろ」
 キヌホルダヌを拟い䞊げたアルパカに呌び止められたよだかは、䞀回深呌吞をするず顔の巊半分を手のひらで隠しおから振り返り、こくりず頷きたした。

 アルパカの手の䞭にはよだかの宝物が優しくちかちかず点滅しおいたす。シャチもこちらたで寄っおきおキヌホルダヌず䞍自然に顔に手を添えたよだかを亀互に芋比べ
「もしかしお、おたえ、よだか」ず静かに問いかけたした。

 よだかは目をぎゅっず぀ぶっおぶんぶんず䜕床も銖を瞊に振りたした。
「そっか、よだかかヌ たさかリアルに䌚えるなんお思わなかったよ。おたえ今暇 なら䞀緒に食える草探しおくれよ。今倜は野草倩ぷらパヌリナむなんだぜ」

 シャチは旧友のようによだかの背䞭をばんばんず叩きたしたが、よだかは玠盎に喜ぶこずができたせん。店長ずのやり取りを䞊手に説明するこずもできないたた、もやもやずした気持ちを抱き぀぀、呚囲の草花をぐるりず芋枡したのち、これは食べられる、これはえぐみが、こっちはおひたしに、ずテキパキず草を遞別しおいきたした。先ほどの眪償いずしおせめお圌らの圹に立ちたい䞀心での行動でした。

「よだか随分詳しいのな」
 シャチが顎に手を眮き、感心しおよだかの動きを芳察しおいたす。
「ラゞオで野草食べおるっお聞いおからネットで色々調べたんす。あ、アルパカさん、それはだめです腹壊したす」
「おたえ、俺たちのラゞオめっちゃ聎いおくれおんのな。しかも投皿通りむちゃくちゃたじめでりケる。そんなにたじめなら  いっそ俺たちのマネヌゞャヌになっおくれたらいいのに」 

 ニコニコずした衚情でシャチがアルパカに芖線をやりたした。
「たじでそう。俺たちの事務所、マネヌゞャヌ業も芞人に兌任させおんだよ、信じらんないだろ 卒業したら俺たちのずこ来いよ。もちろんよだかが良ければ、だけど。その時たでにはもっず売れおマネヌゞャヌ雇えるくらいにはなっずくからさ。よだかくらいしっかりしたや぀に管理しおもらった方が俺たちもネタ䜜り専念できるし。なんならマネヌゞャヌじゃなくお、どうぶ぀村のメンバヌになっおくれおも歓迎するけどな。たじめ芞人っおめちゃくちゃりケるから」

 倧真面目な顔をしおアルパカが提案するのでよだかは面食らっおしたいたした。
 ラゞオで䜕床もやりずりしおいたからず蚀っお、初察面の人間にこんなに簡単にマネヌゞャヌずしおの仕事を䟝頌するでしょうか。おたけに芞人ずしおのスカりトたで。

 にわかに信じられない話ではありたすが、よだかは圌らが口先だけの人間ではないこずを十二分に知っおいたしたから、䞎えられた蚀葉を疑うこずなく玠盎に受け入れるこずができたした。

 よだかがふたりの瞳をしっかりず芋぀め 「䞍束者ですが䞀所懞呜頑匵りたすので卒業埌、どうか䞀緒に働かせおください」ず深々ず頭を䞋げたずき、空は藍色の宵を迎えようずしおおりたした。

 どこたでも続く倩空には今倜、癜鳥座を織りなす䞀等星のデネブがひずきわ矎しく茝いおいたす。
 倪陜に照らされ色濃く地を這っおいたよだかの圱は、月明かりにスラむドした今、ほんの少しだけ薄くなったようにも芋えたした。

 こうしお真倜䞭のプラットフォヌムを超えお、陞や海や空の隔たりを超え、小さな河原で再䌚した動物たちは、その先ずっずい぀たでもい぀たでもお友だちであったずいうこずです。

おしたい


『よだかの光』の続線はこちら


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やすたにありさ 頂いたサポヌトはやすたにの血ずなり肉ずなるでしょう🍖( â€˜àŒ¥â€™ )ŧ‹”ŧ‹”