積読美術館――リュウイさんのコンサートへ行く。
朝から、なんとなく落ち着かなかった。
今日は、リュウイさんのコンサートの日。
カレンダーを何度も確認してしまう。
「今日だよね」
わかっているのに、もう一度確認する。
机の上には、読みかけの本が一冊。
その隣には、まだ読んでいない本が何冊も積まれている。
私はそれを眺めながら、少し笑った。
「また積んでしまったなあ」
いつか読もうと思って買った本。
面白そうだと思って手に取った本。
途中まで読んで、そのままになっている本。
我が家には、そんな本がたくさんある。
まるで小さな美術館みたいだ。
一冊一冊に、そのときの私の気持ちが残っている。
だから私は、この場所を心の中で、
「積読美術館」
と呼んでいる。
そして今日は、その美術館から一歩外へ出る日だった。
一 出かける準備
出かける前に、鏡を見る。
服を決める。
髪を整える。
バッグの中を確認する。
チケット。
財布。
スマートフォン。
ハンカチ。
何度確認しても、また確認する。
遠足に行く子みたいだ。
でも、こういう時間が私は好きだった。
「今日はコンサートに行くんだ」
そう思うだけで、胸の奥が少し軽くなる。
以前の私は、
「明日でいいか」
と思うことが多かった。
疲れているから。
また今度行けばいいから。
そんなふうに、いろいろなことを後回しにしてきた。
でも今は、
「行きたいと思ったら、行ってみよう」
と思うようになった。
もちろん、体調と相談しながら。
無理をしないことも大切。
けれど、できる範囲で一歩外へ出てみる。
その一歩が、思いがけない一日を連れてきてくれることがある。
今日は、その一日になる気がした。
二 会場へ
会場へ向かう道。
電車の窓から外を見る。
街はいつものように動いている。
買い物をする人。
仕事へ向かう人。
誰かを待っている人。
そんな普通の風景を眺めながら、私は思った。
「みんな、それぞれの一日を生きているんだな」
私にも今日という一日がある。
そして私は、その一日を音楽と一緒に過ごそうとしている。
それだけのことなのに、なんだか特別だった。
駅から会場へ歩く。
少し緊張している。
初めて行くコンサートではないのに、コンサートの日は空気が違う。
入口が見えてくる。
そこには、同じようにコンサートを楽しみにしている人たちがいた。
年齢も、服装も、歩く速さも違う。
でも、今日ここへ来た理由は同じ。
「音楽を聴きたい」
それだけだった。
