
雨上がり、紺碧に輝く“魔女の瞳”に歓喜♪ 「一切経山」 ♣吟行登山♣(0006)
<登山コース>

■小雨のなかでの登山はモチベーションが下がり気味
ウサギのご当地キャラクターが立つ福島駅から高湯温泉行の路線バスに乗車します(キャラは「ももりん」というそうです)。高湯温泉でバスを下車すると、曇り予報だったのに小雨……。

出鼻をくじかれて、タメ息まじりにレインウェアを取り出しました。道路脇の温泉宿への私道に登山口があります(登山者は通行OK)。森のなかに入るとすこし降雨は和らぎますが、モチベーションは下がったまま。

シトシトと降る雨中の登山は単調で退屈で面倒に感じてしまいますが仕方ありません。しかし眺望もないし、とくにまだ花なども見当たらず。「やっぱり楽しくない」
いったん道路(磐梯吾妻スカイライン)と交差するところに出ました。すると、雨中をチャリダーが坂を駆け上がっていきます。浄土平へ向かっているのでしょう。敬服。「すごい根性!」


不動沢を越えたあたりで雨というよりもガスのなかといった天気に変わってきました。蒸し暑いのでレインウェアを脱いでウィンドブレーカーに着替えるとすこしスッキリ。

徐々に標高を上げていき、慶応吾妻山荘の分岐までやってくると天気の状態もだいぶ落ち着いてきました。シャクナゲやマイヅルソウの花も見かけるようになります。このあたりは白いハクサンシャクナゲが目につきます。
■雨が止み光差す森のなかで気分も上々。そしていよいよ魔女の瞳にご対面


はっと気が付くと空からわずかに光が差し込んできました。しばらく上がっていくと開けた砂礫地の大根森に出ました。雨はすっかり止み終わりましたが、まだ雲が厚くちょっと心配。「魔女の瞳は見れるだろうか?」


ひと山越えて次に見晴らしがある高所に上がり切ると、ガッツポーズ! 待望の“魔女の瞳”が眼前に現れました。空も西から青空が広がり始めてきました。「神様、いや魔女様ありがとう!」


この絶好の展望地で腰を落ち着けてお昼ごはんをいただきます。魔女の瞳を眺めながら、心地よい風にも吹かれて気分一新。憂鬱な気分で始まった登山ですが天気とともに心もすっかり晴れ上がりました。


“魔女の瞳”こと五色沼の西岸をぐるりと回り込むように進み、ハイマツの森を抜けてガレ場の斜面を上がっていけば一切経山の山頂です。そこからの景色はまさに広告宣伝によく使われている“魔女の瞳”の姿そのもの。

コバルトブルーと評されることが多いですが、天気や光の差し込み加減で同じ青さでも変化があるそうで“五色沼”という名称のようです。このときはどちらかというとネイビーブルーといった色彩だったでしょうか。



最高のロケーションで一息ついてから浄土平に向けて下山です。登りと同じく荒々しいガレ場の斜面を下り、灌木の森を抜けて湿原に入ると数多くの花々たちに出逢えるようになります。

■楽しみにしていた吾妻小舎に宿泊♪

「あとはのんびりと歩くだけ」と思うと気が楽。心の余裕をもって花々も楽しめます。湿原の木道をてくてく進み、道路を渡って樋沼のそばに建つ吾妻小舎(あづまごや)が本日のお宿です。

今回、一切経山を登りに来た理由は“魔女の瞳”以外にもうひとつ。この吾妻小舎に泊まってみたかったから。ログハウスというよりも昭和の風情が漂う古風な山小屋です。


後継者がなく一時期、閉鎖されましたが、新しい運営者により営業再開されました。風雪を積み重ねた外観に比べて内部の方はまるで今どきの古民家カフェのような趣で快適です。


吹き抜けの高天井とオレンジ色の電灯に照らされた室内の雰囲気は、いまはなき安達太良山のくろがね小屋に相通じるものを感じました。夕食の野菜たっぷり具沢山カレーにも大満足です。小屋番さんに感謝!

お昼過ぎからの晴れた青空のおかげで夜の星空もたっぷりと拝めました。浄土平には天文台があるだけに、周囲に光源がなく、平らな湿原が広がるので天体観望にぴったりの場所です。


翌朝は早立ちして行きには通り過ぎてしまった鎌沼周辺の湿原とお花畑の散策を堪能できました。ふたたび一切経山を登り返して“魔女の瞳”とお別れのご挨拶。前日、登ってきた道を下り、高湯温泉で汗を流してからバスで福島駅に戻ります。

前日は暗い気分で歩いた森の道も、この日は瑞々しく鮮やかな緑色に輝いているように感じます。天気ひとつで気持ちがまったく変わる自分に苦笑。「我ながら自分勝手なもの」

<〆の俳句>
流れ星 鎮魂祈る 夏の空
(浄土平にて 文月 上町嵩広)

<一切経山の概要>
[行程表]
※標準的タイムによる目安(休憩除く)
高湯温泉→ 不動沢(80分)→ 慶応吾妻山荘分岐(90分)→ 大根森(30分)→ 五色沼分岐(30分)→ 一切経山(40分)→ 酸ヶ平分岐(30分)→ 浄土平ビジターセンター(30分)→ 吾妻小舎(20分)
コースタイム/ 6時間程度
標高差/ 1200m程度(高湯温泉:約760m、一切経山:1949m、浄土平:1560m)
[登山コースの補足]
要所に簡易な道標があるので迷うことはあまりないと思いますが、いずれも見落としやすいので注意が必要です。
高湯温泉から登った場合、慶応吾妻山荘あたりまでは広葉樹中心の森ですが、その先からシラビソやコメツガなどの針葉樹が増えていきます。さらに標高を上げていくとハイマツが中心となっていきます。
山頂直下は火山活動の影響のためか植物は姿を消し、ガレ場の急斜面になります。
一切経山の頂上は四方に遮るものがないため360度の展望が開けています。
酸ヶ平と浄土平の湿原は木道が整備されています。
●水場やトイレなど
水場は登山道上にはありません。
高湯温泉バス停そばの公衆共同浴場「あったか湯」内に自動販売機があります。
慶応吾妻山荘ではカフェの営業をしています。
浄土平ビジターセンターに隣接した浄土平レストハウスでは土産物等の販売をしています。屋外に自動販売機があります。
トイレは、高湯温泉「あったか湯」施設内、不動沢から磐梯吾妻スカイラインに出た駐車場そば、慶応吾妻山荘、酸ヶ平避難小屋、浄土平ビジターセンターと浄土平野営地にあります。
[難易度や危険個所など]
大きな難所や危険個所などはあまりありません。
山頂直下の急傾斜のガレ場は足元が不安定です。
不動沢~一切経山 (難易度:B/体力度:3)
浄土平~一切経山 (難易度:B/体力度:2)
※裏磐梯ビジターセンター自然体験活動運営協議会による。難易度はA→E、大量度は1→10。
なお、一切経山(一切経山を含む吾妻山の山域一帯)は活火山です。気象庁による常時観測火山として指定されています。
[付近の山]
東吾妻山
吾妻小富士
西吾妻山
安達太良山
磐梯山

<参考リンク>
浄土平ビジターセンター ※公式サイト
磐梯朝日国立公園 (環境省)
吾妻山の活動状況 (気象庁)
福島市観光ノート (福島市観光コンベンション協会)
やまふく/山からはじまる福島の旅 (福島県観光物産交流協会)
登山道難易度(グレーディング) マトリクス表 (裏磐梯ビジターセンター自然体験活動運営協議会)
浄土平レストハウス ※公式サイト
吾妻小舎 ※公式サイト
福島県クマ目撃マップ (福島県)
<バックナンバー>
0001 あたたかな陽がふりそそぐ「湘南平」
0002 新緑のなかの渓谷歩きがワクワク「棒ノ折山」
0003 まぶしい夏空の高原歩き「日光・戦場ヶ原」
0004 清々しい冬枯れの森を歩く「奥多摩鋸尾根」縦走
0005 春の古都を気軽なミニ縦走で楽しむ「鎌倉アルプス」ハイキング
(2026年7月8日 上町嵩広)