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Photo bygood_vibes

夏想

    百裕(ひゃく・ひろし)

     四季の内で、夏が一番嫌いである。何しろ暑い。特に近頃の夏は、殺しに来ているような感がある。

     仕事で外出する際など、汗と湿気でべたべたになって甚だ気分が悪い。どういうわけか自分の夏用ズボンは内側にナイロンのペラペラしたのがついていて、汗をかくとペタペタ貼り付く。どうも不快極まりない。こんなものを夏用ズボンに付ける意味が一向わからないが、切り取って不都合があっては困るので、そのまま穿いている。
     また、半袖のワイシャツに抵抗があって、一度妻が買ってきたのを着ずにいたら怒って義父にあげてしまった。そういう経緯で今さら半袖を着るわけにいかないから尚更暑い。
     だからどうも夏はいけない。

     子供の頃は夏が好きだった。
     夏になると、毎年テレビのCMでハワイっぽいスチールギターの音が流れた。何のCMだったか一向覚えがないが、あの音だけは今でもはっきり耳に残っている。自分にとっては、夏の始まりを告げる音だったのである。
     夏休みには学校のプールが開放されて、伊神や松岡と泳ぎに行った。泳ぎに行ったとは云っても、実際は水の中でウルトラマンごっこなどをやるばかりで、ほとんど泳ぐことはなかった。
     母親同士が仲良しなものだから、山崎と一緒に水泳教室へ通わされた。自分と山崎はお互い嫌い合っているから嫌でしようがなかったが、それでも通ったおかげで泳げるようになった。
     土曜の夜には近くの商店街で夜市があって、無闇にわくわくしながら遠野とラムネを飲んだ。しばらく屋台を見ながらうろうろして、結局他に何もしないまま時間になって帰った。
     強い日差し、一面の緑、響き渡る蝉の声。陽炎の向こうで白いワンピースを着た黒髪の少女が、麦わら帽子に手をやりながらこちらに笑いかける。そんな情景が浮かんでくるが、一体誰だかわからない。

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    随筆家。日常をそれっぽく書いたり、気持ち悪い話を書いたりする。 著書∶『牛おばさん・他49篇』 パスタ屋店長、人材派遣屋、メーカーのEC担当など種々の職業に就く傍ら、2003年よりウェブ上で執筆活動中。

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