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Photo byryuseizan

子供と不審者

    百裕(ひゃく・ひろし)

     時折、文庫本を持って少し離れた公園へ行き、読書の傍らに鳩に餌をやった。今はそういうのが迷惑行為だと知っているのでもうしないけれど、当時は大学生で、そんなことには考えが及ばなかったのである。また、世の中の認識も今ほど厳しくなかったのではないかと思う。

     ある時、いつものように公園へ行った。餌は、向かいのコンビニで買ったポテトチップスを、自分でも食べながら鳩にもやるのである。
     1枚地面に放ると鳩がわらわら寄って来る。そうして嘴でつついて食べるのを、上手に食べるものだと感心しながら眺めていたら、遊んでいた子供らが寄って来た。恐らく幼稚園へ上がったぐらいの年頃だったろうと思うけれど、もう判然しない。
     子供らは大喜びで鳩を追い立てた。10羽ばかりいたのが一斉に飛び立って、辺りは随分な砂埃である。子供らはその埃で猶々なおなお喜び、愈々いよいよハイになる。
     鳩の方も心得ていて、逃げるといっても数メートル先へ移動するばかりだから、餌を撒けばすぐに戻るのである。そうして戻ると、また子供らが狂喜しながら蹴散らかす。
     それを何度か繰り返したら、自分も普段であればきっとそんなことはしないのだけれど、ふっと優しい心持ちになって、近くの子にポテチを1枚手渡した。
    「これ、鳩にやってみる?」
     その子は黙ったまま受け取って、母親の所へ戻った。
    「え? えぇ? もらったの? しっ! 捨てなさい! しっ!」
     こちらは鳩にやれと云ったので、食えと云って渡したのではない。その意思表示に3枚まとめて放ったら、集まった鳩をさらに子供らが蹴散らした。
    「くれたのよぉ!」
    「えぇ!」
    「ほんとに?」
    「ちょっと、マー君、こっちに来なさい!」
     もう餌やりは止して帰った。

     
     
     
    随筆家。日常をそれっぽく書いたり、気持ち悪い話を書いたりする。 著書∶『牛おばさん・他49篇』 パスタ屋店長、人材派遣屋、メーカーのEC担当など種々の職業に就く傍ら、2003年よりウェブ上で執筆活動中。

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