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「12星座あるある学園 第十三話|謝罪」

    父ちゃんはダメな奴だ。

    けれど、クズではないと思う。


    母ちゃんが死んでから、僕は父ちゃんと二人で暮らしてた。

    どうも、父ちゃんは会社勤めというのが、性に合わないようだった。

    仕事が決まっても、2,3か月で辞めてしまう。

    早い時だと、1日持たずに辞めた事も何度かあった。


    「高校や大学に行っていないのが、そんなに悪いのかよ。お前らよりずっと俺のほうが、スキルは高いっての」

    よく、そんな愚痴をこぼしていた。


    父ちゃんは、学歴がないことを気にしていた。

    下に見られるのが、我慢できないらしかった。

    もっとも、父ちゃん自身も何か我慢できない事があって、学校を辞めたのかもしれない。


    小学校に行ってから気が付いた。

    ランドセルを持っていなかった。

    筆箱もなかった。

    体操着も皆と違っていた。

    ノートも大学ノートだった。


    それが普通じゃないと知った。 


    1年生の頃は、皆と違うということで、よくからかわれていた。

    ドッジボールの時は、いつも的にされていた。

    そのうち、逃げるのが上手くなった。


    ある日、先生に給食代を払うよう言われた。

    それから僕の給食は、一番最後に配られるようになった。

    人気の給食だと、ほんの少ししか配られなかった。

    肉の脂身しか入っていなかったり、1,2本のスパゲティと大量のピーマンだったこともあった。


    僕は字を書くのが下手だった。

    それでも、なんとか1年生の時は、国語のテストでも、点数が取れていた。

    算数はちゃんと計算があっているのに、名前の書き方が悪いと、減点されたりもした。

    「れ」の字が、どうしても上手く書けなかった。



    2年生になると、誰も僕に話しかけなくなった。

    からかわれる事もなくなった。

    たまに、遠巻きに見られていると感じる事もあった。

    国語のテストは、毎回0点だった。


    それでも、僕は勉強が好きだった。

    知らない事を知る事が楽しかった。



    3年生になると、僕は透明人間になった。

    もう、ドッジボールで当てられる事もなくなった。

    教室の一番後ろのすみっこで、ひっそり授業を聞いていた。



    けれど、だんだん黒板の字がみえなくなり……。

    僕は学校に行くのをやめた。


    学校へ行かなくなっても、父ちゃんは何も言わなかった。

    ただ、時々
    「ちゃんと、勉強しろよ」
    とだけ言った。


    学校へ行かなくなってから、ご飯は1日1回になった。

    パックのご飯に、インスタントの味噌汁をかける。

    あとは、ゆで卵と豆苗。

    いつも変わらないメニューだった。

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    炊飯器も電子レンジもない。

    あるのは、湯沸かしポットだけ。


    父ちゃんは、会社で働くのを諦めた。

    家で、便利屋を始めた。

    便利屋は、父ちゃんの性分にあっていたんだろう。

    今までと違って、愚痴る事もなくなった。

    僕も便利屋の仕事を手伝うようになった。

    特に父ちゃんが得意だったのが、壊れた電化製品を直す事だった。

    少しだけ、生活が楽になった。

    父ちゃんの仕事を見て、僕も簡単な物なら修理出来るようになった。

    不燃ごみの日、壊れた家電を拾ってきて、キレイにして修理する。

    それを、リサイクルショップに持って行く。

    大した金額にはならなかったが、それでも、生活の足しにはなった。


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    少しお金が貯まったころ、父ちゃんはパソコンを買った。

    それから、プログラミングとかライティングとか、パソコンを使った仕事もやるようになった。

    僕にもパソコンを使わせてくれた。

    ネットで調べると、今まで以上にいろいろな事が出来るようになった。


    プラバンを使ってキーホルダーの作り方を覚えた。

    拾ってきたオーブントースターを修理して使った。

    キーホルダーには「まかべ便利屋 電話〇〇ー〇〇〇〇」と、キャラの下に便利屋の電話番号を入れるようにして、お客さんに配った。

    リサイクルショップからの修理依頼も増えた。

    昼には、菓子パンを食べた。

    晩御飯がコンビニ弁当になった。

    僕用のパソコンも買ってもらった。


    便利屋の仕事とパソコンを使った仕事は思いのほか順調で、父ちゃんは休む暇もなかった。

    それでも、いつも楽しそうで、僕も楽しかった。


    滅多に僕と父ちゃんは話をすることがなかった。

    十歳の誕生日、父ちゃんが言った。

    「今日から十歳だな。これから、この家のお金の管理を零に任せたい。出来るか?」

    「うん!」


    僕は、お金の管理を任されて嬉しかった。

    やりくりするのは、大変だった。

    けれど、きちんとお金の管理をしていると、生活もどんどん良くなっていった。

    会計というのも、覚えた。

    便利屋の売り上げの管理もするようになった。

    時々、父ちゃんは図書館にも連れて行ってくれた。
    家にある本はおじちゃんからもらった絵本と図鑑だけだった。

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    図書館にいると、楽しくてあっという間に時間が過ぎた。

    図書館の帰り道。

    「なぁ、零。中学になったら、学校へ行かないか?俺は学校なんか途中で辞めたけどな。お前は行けるなら行っとけ」

    父ちゃんが不意に言った。

    「僕、字が書けないから……」

    その時初めて、父ちゃんは僕が字が書けない事を知った。

    父ちゃんは、勉強が苦手だから学校へ行かなくなったのだと思っていたらしい。 

    「そう…か。まだ、中学に行くまでには時間がある。父ちゃんが勉強、みてやろう」

    「わかった!僕、頑張る!」

    1年生用の升目の大きいノートを使うのは、少し恥ずかしかった。

    でも、大きく書くと、ちゃんとした字が書けるのがわかった。

    升目があると、書きやすい、というのにも気がついた。

    でも、ずっと字を書いていなかったから、なかなか思い通りに書けなかった。

    中学校に行ってみたかった。

    勉強もしたかった。

    中学生や高校生のお話を読むと出てくる、部活というのをしてみたかった。


    けれど……。
    人と上手くやっていけるかな。

    それに、僕が学校へ行ったら、父ちゃんは一人でちゃんと仕事、出来るかな?



    ごほっ、ごほっ。

    「父ちゃん、風邪?」

    ここ数日、父ちゃんが咳き込む事があった。

    「薬飲んでりゃ、大丈夫だろ。今やってる仕事を終わらせたら、しばらく休むさ」

    父ちゃんは、仕事が立て込んでいるらしく、それから数日間、ほとんど寝ずに仕事をしていた。



    夜中、父ちゃんの咳が聞こえて、何度も目が覚めた。

    朝起きたら、父ちゃんが横になっていた。

    仕事も終わって、納品したようだった。

    「父ちゃん、朝ごはんは?」

    横になったまま返事をしない。

    近くに行くと、呼吸が荒いのが分かった。

    窓の外には雪がちらついていた。

    火の気のない部屋は冷え切っていて、父ちゃんの咳だけが妙に大きく聞こえた。 

    額に触ってみると、熱かった。


    ―——どうしよう…。

    ネットで調べてみても、どれもこれも当てはまる気がして、余計に分からなくなる。

    そうだ。

    図鑑におじちゃんの名刺を挟んでいたのを思い出した。

    父ちゃんがごみ箱に捨てたのだけれど、こっそり拾って図鑑にはさんで隠した。


    僕は名刺の番号に電話した。

    おじちゃんに、すぐ救急車を呼ぶようにと言われ、電話した。

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    父ちゃんは入院することになった。

    あまり状態は良くないらしく、しばらく入院しなくてはならないらしい。

    病院の待合室で、おじちゃんと二人で座っていた。

    「零君、うちに来るのは、嫌…だよな?」

    「一人で大丈夫です」

    「そういうわけには、行かないんだ」

    おじちゃんは、その後、誰かと長い時間、電話をしていた。

    「今日一日、おじちゃんが零君の家に泊まるよ」



    次の日、家に、僕のじいちゃんとばあちゃんだという人が来た。

    僕は初めてじいちゃんとばあちゃんに会った。

    じいちゃんは、おじちゃんに父ちゃんの容態を詳しく聞いていた。


    ばあちゃんは、部屋の中を見て少し驚いていた。

    「零君のお着換え、持って行きましょうね」

    そう言われたので、スウェットと下着と靴下をリュックに詰めた。


    「コートはないの?」

    ばあちゃんに聞かれたが、そんなものは持っていなかった。

    僕は、父ちゃんが良くなるまで、じいちゃんの家に行くことになった。

    じいちゃんの家はすごく遠かった。

    車の中で、じいちゃんが教えてくれた。

    「お父さんも、あと数日したら、うちの近くの病院に移るから安心しなさい」
    僕は、こくりとうなずいた。

    「零が分かっている事だけでいいから、教えてくれるか?」

    僕は、聞かれるままに今までの事を話した。

    こんなに長く話したのは初めてだった。

    時々、どう言えばいいのか分からなくなって、言葉に詰まることもあった。

    それでも、じいちゃんとばあちゃんは急かさなかった。
    僕が話し出すまで、じっと待っていてくれた。

    僕の隣で、じいちゃんは時々うなっていた。
    ばあちゃんは、「まぁ」とか「そうなのね……」と呟いていた。


    僕の話が終わると、じいちゃんが言った。

    「零、中学になったら学校へ行くつもりなら、今から小学校にも行ってみないか?」

    「え?」

    「前に行っていた学校と、全然別の学校だ。行ってみて、合わないなと思ったら、その時考えればいい」

    「…まだ、字が上手く書けない…」

    「勉強なんぞは、後からどうにでもなる。まずは、学校が好きになれるかどうかだ」

    「父ちゃんは、どうなるの?」

    「私の後を継いでもらおうとは、思っている。あとはあいつ次第だがな」



    僕は、しばらく考えた。

    「......うん。行ってみる」

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    じいちゃんの家は、おじちゃんの家ほどには広くなかった。

    便利屋のお客さん達の家くらいの、普通の家だった。

    こんなに長い時間、車に乗ったことがなかったので、僕はじいちゃんの家についたころには、すっかり寝てしまっていた。

    翌日、学校に行く前に必要だからと、あれこれ検査された。

    眼鏡をかける事になった。

    本当なら、眼鏡ができるまで1週間かかるらしいけれど、その日の夕方には、もう出来ていた。

    今までぼやけていた世界が、急にはっきりして、驚いた。

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    じいちゃんが欲しいものや、必要なものはないか、というので、家に置いて来たパソコンと携帯の充電器が欲しいと頼んだ。

    着替えしか持ってきていなかった。

    じいちゃんは、新しいパソコン、タブレット、スマホを電話で注文した。

    「一番高くて、一番性能がいいやつを頼む」

    びっくりした。

    「いいの?こんなにいっぱい…」

    「いいんだ。今までバカ息子がお前に苦労をかけたからな」

    「着替えとかは、明日一緒に買いにいきましょうね」


    学校へ行くのと同時に、寮というのに入る事になるらしい。

    寮って、良く、外国のお話には出てくるけれど、日本にも寮がある学校があったんだ、と驚いた。

    「転校生なんて、滅多にないから、皆にいろいろ聞かれるかもしれない」

    「え?転校生って他の学校から移ってくる人だよね?」

    「そうだが、どうかしたか?」

    「僕、学校に行ってなかったから、転校生ではないんじゃない?」

    「そんな事は、気にすることはない。それよりは、皆に馴染む事が大事だ」

    その日の夜、僕は熱を出してしまった。

    ばあちゃんがおかゆを作ってくれた。

    味噌と卵が混ざっているものが乗っていて、甘くておいしかった。

    結局、服を買いに行けないままに、学校に行くことになった。

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    学校にはじいちゃんとばあちゃんと一緒に行った。

    「先に、私達が居る場所を教えておかなくちゃな」

    玄関から入って、かなり長い距離を歩かされた。

    そこの区画には会議室が二つ、理事長室、倉庫、用務員室、カウンセリング室が二つという順番で並んでいた。

    「何か困った事があったら、いつでも用務員室か、カウンセリング室に来なさい。ふたりとも、どちらかにいるからな」

    じいちゃんは用務員室でスーツ姿からつなぎに着替えた。

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    それから僕は職員室に連れていかれた。

    「気楽に、な」

    じいちゃんはそう言いながら、僕の髪をわしわしと撫でた。

    そういわれても、僕はがちがちに緊張してしまった。
    まともに顔も上げられない。
    「九十九さん、自己紹介をお願いします」

    先生にそう言われて、挨拶しようとしても声が出ない。


    僕のために、一番前の席を譲ってくれた子は、スウェットのほつれを直してくれたし、レポート用紙も貸してくれた。

    でも、まともにお礼も言えない。

    隣の席の子が、教科書を一緒に見ようと言ってくれた。


    「連れションしようぜ」

    連れションがなんなのか分からなかったけれど、誘われるままに、一緒に教室を出た。

    あれこれ話しかけてくれた。

    けれど、なんて答えればいいのか、わからなかった。



    ここの男子は皆、名前で呼び合っていた。

    自分の事を「僕」じゃなくて「俺」と言っている。


    そっか、そうだよな。

    もう6年生なんだ。

    「僕」って言うと恥ずかしいかも―——。


    寮生活の初日、同じ部屋の子と、夜中低緯度オーロラを見ていた。

    「お、俺のいたとこ、もっと赤かったよ」

    俺って言えた…。

    少し照れくさかったけれど、気が付かれていないようだった。


    他の男子から「零」と呼び捨てにされるのが、嬉しかった。

    僕…じゃなくて、俺も皆を呼び捨てにしていいのかな。


    ―——でも。

    後ろめたさがあった。

    寮の皆が歓迎会をしてくれた。

    ここの皆は誰も僕を無視しない。

    それどころか、たくさんの人にこんなに優しくされたのは、初めてかもしれない。


    嘘ついているのが辛かった。

    だから、明日言おう。

    男子寮の皆に伝えた。

    「あ、明日、話す」


    その日の朝、双葉瞬と七瀬律は教室に零がいない事に気が付いた。

    「あれ?零は?」

    「食堂から、まっすぐ教室に来たと思ったんだけど」

    「理事長室のほうに行くのをみた!!」

    陽羊隼人は重大な事であるかのように、大げさに言った。



    1時間目が始まる直前に零は教室に戻って来た。

    一緒に、つなぎ姿の初老の男性が教科書を持って、入って来た。

    零が着席すると、男性は教科書を机の上に置いた。

    「頑張れよ」

    そういって、男性は零の頭をわしわしと撫でた。


    「なんで、用務員さんが教科書、持ってくるんだ?」

    鷹野怜央が不思議そうに男性を見つめた。


    「き、きっと重たいから、じゃない?」

    委員長が少し慌てた様子で、怜央に答えた。


    「夏場とかよく、外で草刈りしてる人じゃん。あのおじいさん、親切だよなー。子供好きっぽいし」

    矢島悠翔がにやりとした。


    昼食中、隼人が言い出した。

    「魔王、いつ話すんだ?」

    律が、瞬を膝で突っつく。

    「こいつ、いつまで魔王モードなんだ?」

    「スイッチ入って丸一日経つから、そろそろ切れんじゃない?」

    「えっと、晩御飯の後」

    「ムリして言わなくても、いいんだぞ?」

    怜央が、零の肩を叩く。


    「大丈夫。ちゃんと、許可取った」

    「ふぅん、許可、かぁ」

    悠翔は、面白そうに零の顔を見た。

    「お、俺、準備があるから、部屋に戻ってる」

    「じゃぁ、俺も行く」

    と立ち上がった瞬を、律が止めた。

    「晩御飯の後って言ってるんだから、待とう」

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    零は、晩御飯の時、丸めた紙束を持ってきた。

    足元に置いて、食事を始めた。


    皆、その紙が気になってしょうがなかった。

    零がちょびりちょびりとご飯を食べていた。

    「おい、いつものように、ご飯に味噌汁かけろよ。その方が早く食べれるだろ」

    隼人は、かなり早く食べ終えていた。

    「何言ってんだい。ご飯はゆっくり噛んで食べるのが、一番なんだよ」

    調理のおばちゃんが、隼人をたしなめた。

    でも、他の男子も、全員同じ気持ちだった。


    「今日は朝からずっと、落ち着かないよね、男子達」

    和泉冥香がつぶやいた。

    「私も感じてた」
    「私も」

    川代澪奈、深海奏音も同意する。

    全員の意識が、零と零の足元の紙筒に集中していた。

    やっと、零がご飯を食べ終わった。

    「あら、今日はかなり食べたね」

    「美味しかったです。ごちそうさまです」

    おばちゃんは、零がちゃんと喋ったので、少し驚いた。

    けれど、すぐに笑顔になった。

    「そうかい、そうかい。嬉しいよ」


    おばちゃんはなんとなく、その場の空気を察していた。

    「さぁさぁ、大事な事があるんだろう?まずは全員で食器を片付けてしまったら?」

    皆も、ハッとして食器を下げ始める。

    いつになく手際良く、かなりのスピードで食器は片付けられた。

    零も手伝おうとしたが、澪奈に黙って座ってて、と言われてしまった。

    片付けが終わって、全員がテーブルにつく。

    委員長が手を挙げる。

    「これから、何があるんですか?私達も聞いていいのでしょうか?」


    零が立ち上がって、それに答えた。

    「皆に聞いてもらいたいんだ。今から、これを配るね」

    と言って、テーブルの左右の列に、ホチキスで止められた書類を配った。

    配られた書類の一番上には、今日の日付が記入されていた。

    最初に「氏名 九十九零」「生年月日 〇〇年2月14日」

    などと印刷されていた。


    「なんだこれ?」

    隼人が初めて見た、といった感じで、書類を見つめる。

    「履歴書だろ」

    悠翔が答えた。

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    「うん」

    零がうなずいた。

    「まずは、皆に謝ります。俺、嘘ついてました。ごめんなさい!」


    「俺、転校生じゃないんだ」

    「え?学校の天井裏に住んでたとか?」

    「シリアスな話してるのに、バカな突っ込みすんなよ…」

    瞬の突っ込みをすぐに律がたしなめた。

    「黙って、聞け」

    怜央も瞬を睨んだ。


    「今まで、学校に行ってなかったんだ」

    履歴書には

    「〇〇年 黄昏市立黄昏小学校入学 〇〇年 黄昏市立黄昏小学校中退」

    と書かれていた。


    他には、自分の事に関して

     食べ物の好き嫌いが多いです。

     少しでも食べられるようになりたいです。

     字が下手なので練習中です。

     話をするのが苦手です。

     壊れたものを修理するのが、得意です。

     パソコン操作やデジタル機器を扱うのが得意です。

    といった事が書かれていた。

    最後に

    夢
    早く学校を卒業して、大金持ちになって父に好きな事をさせてあげる事です。



    誰も何も言わなかった。

    最初に笑い出したのは、瞬だった。

    「前に学校行ってなかったとか、どうでもいいよ」

    「魔王なんだから、当たり前だろ」

    隼人は一人で納得したような顔をしている。

    「俺なんか、今初めて転校生の本当の意味を知ったぞ」

    怜央も苦笑いした。

    「そこに引っ掛かってたんだ?」

    律は、真面目な顔をして、零を見つめた。

    「うん…。本当にごめん…」

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    「いや、転校生って言っても、嘘にならないから」

    悠翔の言葉に零だけじゃなく、皆が驚いた。

    「公立の小学校は、学校行ってなくても、退学にならないんだよ」

    「そ、それって本当?」

    「本当」

    「なんだ、良かったね。零君!」

    それまで、どうしたらいいかと困っていた女子達も、一斉に零に声をかける。

    一人、零だけが狐につままれたような顔をしていた。

    自分はずっと、嘘をついているのだと思っていた。

    学校に行かなくなったのだから、退学になったのだと信じていた。
    「これで話は終わりです。それでは、寮に戻ってください!」
    委員長の掛け声で、皆、自室へと戻って行った。

    『良かった。何も後ろめたい事がなかったんだ……』
    安堵の気持ちが大きくて、零はしばらく、その場から動けなかった。


    2学期最後の日、明日から冬休みに入る日。
    この日は、午前中で授業が終わる。

    「うわぁー、やめて!!」

    箒を剣に見立てて構えた隼人が、逃げる零を追いかけ回す。

    「今日こそ、俺の新必殺技と勝負しろ!」

    「……必殺技磨くより、床磨いたら?」

    「問答無用!零、いざ勝負!」


    「隼人、侍になりきってるのか?」

    怜央と悠翔が、隼人の妙な口調に不思議そうな顔をしている。

    「昨日、食堂で時代劇見てから、こんな感じなんだよ」と、瞬が肩をすくめた。

    バシッ、と律の持っていた雑巾が二人の間に飛んできた。

    「おい、お前ら、いい加減掃除しろよ!2学期最後の掃除なんだぞ!零もそんなバカ、まともに相手にするな!」

    「……俺だって、そうしたいんだってば」

    「早く掃除を終わらせないと、クリスマス会に参加できないぞ」

    その言葉を聞いて、隼人が猛烈に掃除を始めた。

    吊られて皆も大急ぎで、掃除をし始めた。

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    「それでは、恒例のクリスマス会を始めます」

    皆で、クラッカーを鳴らす。

    「今年も1年、ありがとう」

    「来年もよろしく!」


    ケーキや唐揚げ、菓子類や飲み物をそれぞれが好きに飲んだり食べたりしはじめた。

    明日から冬休み。

    それぞれが、冬休みの計画を相談していた。


    「零は、冬休みはどうするの?」

    瞬が尋ねた。

    「じいちゃんの家で、勉強しなきゃ」


    「皆でスキー行くんだけど、零も行こう」
    律の提案に、皆がうなずいた。

    「じいちゃんに聞いてみる。」

    「そうだ、グループLINE、教えるね」

    律がスマホを取り出して、友達追加をした。

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    「零君、初詣、一緒に行かない?」

    奏音に声をかけられた。

    「初詣なんて、行った事ない」

    「だ、だめ?」

    「私達も一緒に行くから、絶対行こう!」

    「日本の行事は大切に」

    澪奈と冥香も一緒に行くらしい。

    「うん。じいちゃんに聞いてみる」


    「そういや、零のじいちゃんの家ってどこ?」

    瞬がケーキを頬張りながら尋ねた。

    「んと、学校のすぐ隣?なのかな?」

    「零のじいちゃんって、何してる人?」

    「えっと、学校の用務員」

    「あの、教科書を持ってきてくれた人?」

    「うん」

    零がうなずいた。


    律と悠翔が顔を見合わせた。

    「いや、やけに親しいと思ったら、そうだったんだ」

    律が納得したように呟いた。

    「てか、あの人、理事長だろ」

    悠翔がさらっと言った。


    そこにいた全員が驚いた。

    「では、委員長の従弟なんですか?零君は」

    「遠い親戚とおっしゃってませんでしたか~?」

    楓と葵が委員長に鋭い目を向けた。

    「……理事長の孫だと分かると、皆が普通に接しないのでは、と祖父が心配していたんです」 

    委員長は、しぶしぶ答えた。


    「えっと…じいちゃんが理事長?用務員じゃないんだ??」

    「理事長なんて、暇だからと用務員のような事をやっているんです」

    委員長は眉間に皺をよせていた。


    『じゃあ、じいちゃんが言った、とうちゃんを自分の後継者にするって……』

    用務員の事だと思っていたけれど、理事長にするのか?

    理事長ってなんだ?

    長とつくから、偉いんじゃないだろうか?


    でも、父ちゃんにそんな事、出来るとは思えない零だった。

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    ▶「12星座あるある学園」マガジン


     
     
    ショートショートと漫画を書いています。 日常の出来事や夢、星座、ふと頭に浮かんだ風景から、物語を作っています。 少し不思議な話、懐かしい話、ときどきちょっと切ない話。 星空、神話、科学、アニメ、漫画、そして人の心の動きが好きです。

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