
『未練配達員』 #毎週ショートショートnote
道端に落ちている未練を、うちの猫は拾ってくる。拾ってきた未練は人様のものだから、返さないといけない。
「僕は行けないよ」と猫はそう言って、そのまま昼寝をはじめる。
だから僕が届けることになる。
何も持たずに返すわけにもいかない。パテを二枚挟んだボリューム満点のハンバーガーを手土産に、未練の持ち主を訪ねた。
昨夜は夕食を我慢して、サラダで済ませたらしい。ハンバーガーを差し出すと、「あー」とまだ悩んでいる。
「食べられるときに、食べたいものを食べたほうがいいですよ」そう言うと、「そうだよね」と笑顔が戻った。
――未練、解消。
家に帰ると、また猫が未練をくわえてくる。「また拾ってきたの」と言うと、猫は「家の中に落ちてたよ」と目を細める。
――先週、保護猫の引き取りを断った件だ。
猫はしっぽを振りながら言う。
「先輩としての立場と威厳。それとチュールは絶対僕が先。それが条件ね」
うちの猫が未練を落としたら僕が絶対拾って届ける。必ず解消するからね。
(了)
※下記、毎週ショートショートnoteの企画に参加させて頂きました。