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#7【沈める泡ず、耜溺のワルツ】

    【第䞃章】『氎流に焊がれお』

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    アプリコット家の厳かな開䌚宣蚀が、深海の倜を切り裂いた。

    「——これより、我が王家䞻催の仮面舞螏䌚を執り行う。」

    父の冷培な声が䌚堎に響くず、たるで魔法がかかったかのように、重々しい氎の流れが華やかな音楜ぞず倉わる。それは、結晶化した海氎の振動が奏でる、矎しくもどこか䞍気味な旋埋だった。

    䌚堎の景色は、たさに「異䞖界」だった。

    幟千もの発光サンゎがシャンデリアのように宙を舞い、気泡の䞀粒䞀粒が貎族の宝石ずなっお光を反射する。ドレスやスヌツに斜された鱗の刺繍は、螊るたびに虹色に乱反射し、この䞖のものずは思えない光景を䜜り出しおいた。

    ——フィズは、そのきらめきの䞭に、ひずり取り残されおいた。

    䟋幎ず同じ、端っこの柱の陰。

    頭を垂れ、小さな䜓をこれ以䞊ないほど䞞めお、自信なさげに息を朜める。

    「  っ」

    胞が苊しい。

    もし、君がこの䞖界にいたら。

    この極圩色の光の䞭で、あのギラギラした瞳を茝かせたら、どんなに玠敵だろう。

    フィズは、誰にも芋えない堎所で、そっず目を閉じた。脳裏に浮かぶのは、アゞトの熱気ず、䞍噚甚に赀らんだあの人の暪顔。

    その幞犏な空想が、珟実の冷たい孀独をより䞀局際立たせる。

    「ふふ、」

    埮かな、さざめくような気配。
    背埌から、矎しい旋埋のような声が重なった。
    芖界の端に、華麗に螊る兄たちの姿が芋える。

    第䞀王子である兄は、囜䞀番の矎姫ず完璧なステップを螏み、第二、第䞉、第四の兄たちもたた、それぞれに芋繕われた「盞応しい盞手」ず手を取り合い、倖亀の駒ずしおの優雅なダンスを繰り広げおいる。

    四人の兄は、螊りの合間にふず芖線を亀わした。

    その瞳は、獲物を狙う猛犜類のように鋭く、それでいお愉悊に満ちおいる。

    蚀葉は亀わさない。けれど、目で䌚話しおいるのだ。
    くすくすず、喉の奥で笑い合うような冷ややかな気配。

    フィズは、その悪意を党身で受け止めながら、さらに䜓を瞮めた。
    着せられたのは、ドレスのようにフリルを幟重にも重ねた、䞭性的な衣装。

    自分の身分を隠すための、あるいは「出来損ない」を晒しものにするための皮肉な装い。だが、フィズにずっおこれは、唯䞀の盟でもあった。誰も、これを「王子」だずは思わない。透明な気配ずなっお、この矎しい地獄から隠れるための鎧。

    「  あ、」

    ぶ぀かるはずのない回廊の隅で、ふいに肩がぶ぀かった。

    「 っごめんなさい、 」

    芋䞊げるず、そこには前髪を䞋ろしたカルヌアがいた。

    圌は正装のフリルを纏いながらも、どこか着慣れない様子で、ひらひらず挂っおいる。やはり、圌もこの華やかな牢獄を窮屈に感じおいるのだろうか。

    「  あ、カルくん  。」
    「ん〜、  やぁ、末っ子くん。」

    カルヌアは呚囲を芋回し、誰もいないのを確認するず、ふわりした語尟で、息を吐いた。圌の瞳には、この舞螏䌚を楜しむ色など䞀切ない。

    「今日も、かくれんが   退屈だねぇ。」
    「  うん。お父様も、兄様たちも、忙しいから 」
    「そ〜ぉ。  でも、良いこずもあったんじゃない」

    カルヌアは悪戯っぜく埮笑み、フィズが胞元に隠し持っおいる招埅状のあたりに芖線を向けた。人に興味がないのか、それずも興味がないからこそ、目を向けられるのか。ずもかく圌は、鋭い目を持぀。

    「  っ」

    フィズは慌おお手で芆う。カルヌアはそれを気にするでもなく、空䞭に舞う泡を指先でなぞった。

    「 垰りたいなぁ〜、」
    「  カルくんも」

    家にいるのに垰りたいだなんお、おかしなこずだずは思うけれど。それでもがくたちの心は、ここから垰りたがっおいる。

    「うん。  あそこにいる、お父様も、君のお父様だっお。きっず今頃『未来の囜』の話で倢䞭なんだ。おれたちのこずなんお、ただの食りにしか思っおないんだろうな〜ぁ。」

    カルヌアは、ふわりずフィズの暪に䞊んだ。
    二人の小さな圱が、柱の陰で重なる。

    「——いっそ、党郚壊れちゃえばいいのにね。」

    カルヌアの蚀葉は、氷のように冷たく、砂糖菓子のように甘かった。

    その蚀葉にフィズは䜕も返せず、ただ俯いた。
    目の前を芋たくない、先の䞖界に垌望はない、そういう虚が、圌ずの波長をなんずなく合わせおいるのだろう。

     けれど、今は、壊れたいわけではなかった。ただ、連れ去っおほしい、逃げ去っおしたいたかった、ここではないどこかぞ。

    䞀曲目が終わった頃には圌の姿はなく、しんず静たった冷たさに、堎内が包たれる。

    冷たい倧理石の床、冷たい䌚話、冷たい仮面。
    そのすべおが、フィズを抌し぀ぶそうずする。

    「 がくは、  」

    フィズの぀ぶやきは、誰の耳にも届かない小さな泡ずなっお、広倧な舞螏䌚の海ぞず消えおいった。

    い぀始たるのか、い぀終わるのか。
    この残酷で矎しいワルツの果おに、フィズが願う「奇跡」は、果たしおこの地獄たで届くのだろうか。

    フィズは、招埅状の硬い感觊を握りしめ、遠くの波音に耳を傟けおいた。

      
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     そのずき。

    䌚堎を包む優雅な旋埋の裏偎で、䞍協和音のように、けれど甘い毒を含んだ気配が舞螏䌚の深淵に混じり蟌んだ。

    「——  あら、随分ず窮屈そうねェ、お姫様」

    頭䞊から降っおきたのは、鈎を転がすような、深海のように重厚で艶やかな䜎音。

    耳を疑った。だっお、その飄々ずしたからかうような響きは、海の䞭で䜕床远いかけおも届かなかった、あの人の声そのものだったから。 

    フィズは震える銖をゆっくりず持ち䞊げる。
    芖界に映ったのは、真珠ず倜の闇を溶かしたような、矎しくも劖艶な瞳だった。

    ——幻芚だろうか。

    ここは王宮だ。アプリコット家の聖域。厳栌な掟ず冷たい芖線が支配する、あんなに遠い堎所にいるはずの人が、なぜ。

    あたりの非珟実的な光景に、これは海䞭で溺れお芋おいる倢ではないかず、フィズは声すら出せずにいた。 

    「  ねェ、䜕呆けおるの 」

    気づかなかった。ずっず俯いおいたから。呚囲の貎族たちが、圌女が攟぀嵐のような気配に気圧され、波が匕くように音もなく道を空けおいたこずにも。䌚堎䞭が凍り぀き、奜奇ず嘲笑の芖線が、父や兄様たちぞず移り倉わっおいくその空気の倉化さえも。

    ネグロヌニは、深海で纏っおいたものずは違う、掗緎された挆黒のむブニングガりンを身に纏っおいた。だが、その肩にかかる黒い毛皮は、圌女が持぀野生の気高さを隠しきれおいない。

    圌女は閉じた扇子でフィズの錻先を優しく぀぀き、蚂正するように優雅に埮笑んだ。

    「いいえ、」

    ネグロヌニは呚囲の冷たい芖線など、ただの泡であるかのように切り捚おお、真っ盎ぐにフィズを芋぀める。その真珠色の瞳は、冷たい䌚堎の枩床を焌き払うほどの熱を秘めおいた。

    「——  せっかくの舞螏䌚だもの。そんな端っこで柱おりのように沈んでいおは、貎方の煌めく海の色が、霞んでしたうわ❀」

    たるで、あの時のフィズの口調を真䌌るように、芝居がかった口調で語る。フィズの語りよりも、いくらかおどけた調子の、堂々ずした声色だ。

    「それに   どうやらアタシっおば、この䌚堎の誰よりも、ずびきり茝けちゃうらしいから」

    誰かさん曰くね、ずネグロヌニは埗意げに、けれど少し目を逞らしながら、悪戯っぜく唇を尖らせた。

    フィズは、そのあたりに圌女らしい調子に、胞の奥が枩かくなるのを感じた。気づけば、フィズの口角が自然ず持ち䞊がる。この舞螏䌚で初めお、心からの笑みが零れた。

    圌女は扇子を閉じ、フィズの手元にある招埅状ぞ芖線を投げた。

    「お堅い堎所はタむプじゃないっお蚀ったけれど  貎方がそこたで蚀うなら、もらっおあげおもいいわよ。」

    「 」


    「 ねえ、その招埅状、いただけるかしら❀」

    ネグロヌニが優雅に手を䌞ばすず、招埅状はたるで意志を持っおいるかのように、圌女の指先ぞ吞い蟌たれおいく。心も、招埅状も、党郚圌女がぶんどっおいくのだ。けれどフィズは、それをこの䞊ない悊びずしお、捧げた。

    圌女はフィズの前に、ゆっくりず跪いた。

    か぀お海䞭で僕がしたように。今床は圌女が、この矎しい地獄の䞭で、跪いおがくに手を差し䌞べた。

    「貎方が呌ぶなら、嵐の底からだっお駆け぀けおあげる。  たずえ、この舞台がアタシたちの足元で砕け散っお、二床ず戻れぬ海に沈むこずになっおもね。」

    ネグロヌニは、扇を力匷く跳ね䞊げ、䌚堎䞭の芖線を䞀身に集める。圌女の纏う嚁厳は王家をも凌駕するほど鋭く、そしお狂おしいほどに華やかだった。

    圌女は、小さく震えるフィズの右手を、倧きくお、しなやかな手でそっず包み蟌む。


    「さァ、」 

    圌女の瞳が、悪戯っぜく、しかし真剣な情熱で揺らめいた。


    「アタシず螊っおくださる 王子様❀」

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    䞀次創䜜を描きたすむラストず文章 ●『ぢごくかわいい❣人倖お嬢様』🎀🍜仮 ●『氎族共』擬人化🊈🐋🐬 instagram、Twitterにもいたす

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