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掌編小説  身よりのないお金持ちのお年寄りの養子になりたい 

    東京ローカル 岩男


    今日はバイト代が入ったからパチンコにいったら、ほぼすべての金をすった 

    スマホは料金を滞納して止まっている

    家にWi-Fiはない

    フリーWi-Fiの場所までいってタイミーのバイトの予約をいれた

    家に帰ればカップラーメンが大量にあるから食事には困らない

    だけど、Wi-Fiがないから家に帰るとスマホが使えない

    スマホが使えないのは暇でつらい

    暇なのは意外とつらいのだ

    しょうがないから、つぶれかけの古本屋にいった

    1番安い、100円で買える本が一冊だけあった

    タイトルは

    《自分の内面を見つめるということ》


    という本だった

    本には、自分の内面を見つめて、その時に思ったことや感じたことをノートに書き出してみると、本当の自分を知ることができると書いてあった

    くだらない

    そんなことをしても何もならないと思ったが、スマホが使えなくて退屈だったので、暇つぶしにそれをやる日々が始まった

    __________

    ○本日の内面


    例えば、そこに身よりのないお年寄りがいたら、僕は優しく手を差しのべて、養子に入りたい

    僕は尽くしたい、身よりのないお年寄りに尽くしたい

    ただし、お年寄りはお金持ちであって欲しい

    お金はあればあるほどいい

    養子縁組をしたら、僕はお義父さんに尽くしたい

    お義父さんに尽くして、尽くして、長生きをして欲しい

    長く長く生きて貰って、その間に財産を少しずつ生前贈与して貰いたい

    もちろん、国税に目をつけられない範囲で成し遂げたい

    できれば相続税は払いたくない

    だから現金で少しずつ贈与されたい

    極力、足のつかないように、振り込みではなく、現金で贈与されたい

    ただし、ちゃんと看取りたい

    犯罪的な感じを疑われたくはない

    ご近所やお義父さんがかかる病院関係者からは、いい人と思われて、警察が介入する事態にならないようにしたい

    そのためにちゃんと看取りたいし、手厚く看護もしたい

    手厚く看護して、贈与されたい

    ワンチャンスでなるべくデカいヤマを踏みたいけど、養子に入る段階で正確な財産の額はわからないので、コレばかりは運と言える

    いくら優しく手を差しのべてお年寄りの心をつかんだとしても、養子に入る前に

    「あなたの財産はどれくらいありますか?」

    等と言うような輩は養子には入れて貰えないのは明白だ

    だから養子に入るまでは、お義父さんの正確な財産の額はわからないと思う

    僕はこれを 親ガチャ と呼びたい

    手厚く看護し、安らかな顔で旅立ったお義父さんを送り出して巨万の富を得た後、僕はいい女を抱きたい

    いい女を抱きたいし、いいものを食べたいし、いい酒を飲みたい

    ただし、家にはこだわらない

    お義父さんから相続した家はすぐに処分をしたい

    さすがにこの売却益の相続税は払いたい

    僕は裁かれたくはない

    だから、世間にバレやすい形で受け継いでしまった財産の相続税はしっかりと払いたい

    とりあえず、お金持ちのお年寄りと知り合いたい

    __________

    ○本日の内面

    できれば、人のせいにして生きていきたい

    例えば家に泥棒が入って、警察が現場検証をした結果、施錠がされてなくて玄関から侵入されたと言われた場合、僕は最後に家を出た人間ではありたくない

    最悪、泥棒に入られたのは仕方ないとして、鍵を閉め忘れたのは自分ではありたくない

    万が一、閉め忘れたのが僕だったとしても、絶対に家族のせいにしたい

    _________

    ○本日の内面

    例えば、おとしものを拾った場合、繁華街の場合は警察に届けたい

    防犯カメラがあるからだ

    ただし、人通りの少ない場所でサイフなどが落ちているのを発見した場合、しっかりと周囲に防犯カメラがないことを確認した上で、軍手などを着用して指紋をつけないようにして、現金だけを抜き取りたい

    キャッシュカードには手をつけたくない

    銀行には防犯カメラがあるからだ

    だから僕は現金だけを抜き取りたい

    ________

    ○本日の内面

    できれば人のせいにして生きていきたい

    例えば、家が火事になって消防が現場検証をした結果、火の不始末が原因ですと言われた場合、僕は最後にガスコンロを使った人間ではありたくない

    万が一、僕が最後だったとしても、絶対に家族のせいにしたい

    ______________

    ○本日の内面

    家族が欲しい

    _____________

    ○本日の内面

    アパートの壁が薄くて、となりの音がうるさい

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    ○本日の内面

    人のせいにして生きていきたい

    内面を見つめると、泥棒に入られたり、火事になった時に家族のせいにしたいと思うことがあるけれど、僕には家族がいないから、自分のせいになってしまう

    僕は家族が欲しい

    ____________

    ○本日の内面

    家族が欲しい

    ___________

    ○本日の内面

    家族が欲しい

    _________

    ○本日の内面

    家族が欲しい

    ___________

    ○本日の内面

    僕は中学生の時に、些細な事が原因で父親とケンカをして家出をした

    母親は僕が物心つく前に病気で亡くなっていて、父ひとり、子ひとりだったから間に入ってくれる人がいなかった

    朝まで公園で過ごした僕は、行くところもないのでしょうがなく家に帰った

    布団で寝ていた父親に謝りに行くと、何も返事をしてくれなかった

    何度か謝っているうちに様子がおかしいことに気がついた

    父親は息をしていなかった

    急いで救急車を呼んだけど、手遅れだった

    死因は突発的な心筋梗塞だった

    親戚達は、僕が家にいれば父は助かったかもしれないと僕を責めた

    僕は誰かのせいにしたかったが、天涯孤独になった僕には、もうその誰かがいなかった


    だから僕は家族が欲しいし、人のせいにしたい

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    ○本日の内面

    家族が欲しい

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    ○本日の内面

    父親が死んでからずっと無気力で、大人になってからもタイミーでバイトして最低限の生活費を稼ぐだけの人生だったけど、内面を見つめるようになったら、自分が家族を欲しいと思っていることに気づいたので、ちゃんと就職をしようと思う

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    ○本日の内面

    今まで何社も面接を落ちた

    くじけそうだった

    就職活動の途中で休憩がてら小さな食堂に入った

    食事中に従業員募集のはり紙が目に入ったので、話をしてみたら、社員として採用されることになった

    嬉しい

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    ○本日の内面

    食堂は主人と娘で経営している

    奥さんは、病気で亡くなったとのことだった

    僕はこれから一生懸命働こうと思う

    主人に恩返しするためだ

    あと…僕は娘に恋をした

    ______________

    ○本日の内面

    恋心を隠しながら働いていたら、娘から告白された

    主人に挨拶をしてから交際を始めた

    家族が欲しい

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    ○本日の内面

    主人と親子になる日がきた

    お義父さん、ミユキは僕が幸せにします

    財産どころか、厨房を改装して店は借金がたくさん増えたけど、全部継がせてください

    借金も、お義父さんも、ミユキも、新しく生まれてくる命も、全部、僕が背負いたい

    僕が責任を持って、全員を幸せにします

    ____________


    今日、歩いていたらサイフを拾った

    防犯カメラがない、人通りのないところだった

    そういうときに、周囲に防犯カメラがあるか、ないか、を確認してしまう性質は抜けてなかった

    サイフには遠目でわかるくらい、クラクラしてしまうほどの大金が入っていた

    店には多額の借金がある

    僕は思わず、ハンカチでサイフを覆って、指紋がつかないように拾った


    そして…


    交番に届けた

    ·____________

    ○本日の内面

    やっぱりネコババしなかったのは、ちょっともったいないと思った


    でも、僕は生まれ変われた気がしたんだ


    (完)

    ______


    この掌編小説はみくまゆ会さんの チャレがや企画 に参加させていただいています

    今回のお題は

    おとしもの

    です  


    よろしくお願いいたします



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