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総武線の天使       (創作  フィクション)

吸い込まれそうな瞳を直視できなくてよそ見をしていた僕はいきなりキスをされた

突然のキスに固まっている僕に

[ねえ、シュン 私、店長のことが好きなんだ]

とミユキは言った 

まるでさっきのキスが幻だったというような笑顔を浮かべて…


___


ミユキとはお互いが大学1年生のときに同じ居酒屋のバイトで知り合い、もう3年がたっていた

あまり人付き合いが得意ではない僕は、最初は明るくて活発なミユキの事が苦手だった

休憩中やバイトが始まる前などにミユキ達の仲良しグループが喋っているときに、ミユキは隅の方でスマホゲームをしている僕にもよく話題をふってきて会話に入れようとしてきた

唐突に話題を振られて皆に注目された僕は緊張して頭が真っ白になって言葉に詰まってしまうことがたびたびあった

休憩中にミユキと2人きりになるタイミングがあったので

[佐藤さん、無理に僕に話題を振ってくれなくて大丈夫だから]

と言うと

[えーなんでー、シュンの話も聞きたいじゃん]

と言った

僕は

[あまり話すの得意じゃないからみんなの会話止めちゃうの申し訳ないし]

と言うとミユキは

[でも、シュンの考え方、私、なんか好きだから聞きたいんだよね]

と言って今にも僕を吸い込みそうな瞳で微笑んだ

そして

[あっ、そしたら、今度からバイト一緒になったときは一緒に帰ろうよ、シュンも電車でしょ?]

と言われて固まっている僕に

[決まりね さっそく今日から電車で私の話相手になってね  あっ、あと私の事、佐藤さんじゃなくてミユキでいいから]

と言ってバイトに戻っていってしまった

僕もバイトに戻らないといけない時間だったけど

シュンの考え方好き

という言葉が頭から離れなかった


その日からミユキと一緒に帰ることになった

しばらくの間、僕は

佐藤さん

と呼んでいたけど、その度にミユキに指摘されていつの間にか僕も ミユキ と呼ぶようになっていた

そんな日々が1年続いた

いくら女の子と付き合ったことのない僕でもミユキとの距離がどんどん縮まっていっているのはわかっていた

そろそろ告白しないといけない

ミユキが 電車会 と名付けた2人で一緒に帰る会も、バイトがない日も2人で遊びにいったりする会に変わっていた

バイト終わりに一緒に帰って、休みの日には2人で遊びに行く 

客観的に見たら付き合っているように見える関係に僕は安心していたのかもしれない

ミユキも僕の事を好きでいてくれていると思っていたし、なんならミユキから告白してきてくれないかなと願ったりしていた

2人の関係が変わらないまま大学3年生になり、就職活動が始まった

僕は内向的な自分が女の子と話せたり、仲間と打ち解けられるようになったこの居酒屋が大好きだったので、居酒屋の経営母体の会社を受けて入社の内定を得た

ミユキの態度が変わり始めたのはちょうどそんな頃だった

相変わらず告白ができない僕だったけどミユキとは一緒に 電車会 で帰っていた

だけど、ミユキからバイトが休みの日に遊びの誘いがこなくなった

電車で一緒に帰っているときはいつものミユキなのに…

僕は意を決してミユキを誘ってバイトの帰りにまっすぐ駅に向かわずに公園にいった

電車以外で久しぶりに2人っきりになった緊張と、吸い込まれそうな瞳に思わずよそ見した僕にミユキは不意打ちのキスをしたのだった

僕にとってのはじめてのキスはよそ見している間に奪われて数秒で幻になった



店長は4ヶ月前に赴任してきた26才

背は高く、どことなく椎名桔平に似ているイケメンだった 

バイトの皆にもやさしく、特に僕はこの会社に就職が決まっていたので目をかけてくれていた

でも…確か店長は結婚していたはず

突然のキスでパニックになりながらも僕はミユキに

[店長はたしか、結婚…]

というと

[そんなのわかってるよ、でも好きになっちゃったんだからどうしようもないじゃない]

僕はミユキが泣いているのをはじめてみた

泣いている女の子に何をしてあげたらよいか分からない僕はただ泣き止むまでそばで立ちつくすしかなかった

15分くらい泣いたミユキは無理に作り笑顔を浮かべて

[帰ろっか]

と言った

その日からミユキと一緒に電車で帰ることもなくなった

バイト先でのミユキは今までと変わらない態度だったし、好きな人ができて自分と距離を取り始めていた女の子を繋ぎつめる術を知らなかった僕はそのまま何もできずに過ごすしかなかった

そんなある日、店長から遊びに誘われた

僕も何度かあったことのあるエリアマネージャーと3人で麻雀をしないかということだった

麻雀というゲームは4人でやるゲームだけれど、人数が揃わなければ 

3人麻雀

という3人でやれるルールのゲームもある

今回はその

3人麻雀

をやらないかという誘いだった

来年から正式に上司になる人達の誘いなので当然断ることもできないし、ミユキとどうなっているかも気になったので行くことにした

麻雀をしている最中、ミユキとのことは気になっていたけれど、自分から聞くことはできなかった

内心モヤモヤしていたら、マネージャーが

[そういえば、お前あの娘とはどうなったんだよ]

といったら店長は

[マネージャー、シュンがいる前でやめてくださいよ]

とヘラヘラしながら言った

その態度は本気でやめて欲しい人間の態度とは思えなかった

[まあ、いいじゃん シュンも来年からうちの社員になるんだし]

とマネージャーは言った

店長は店の人間には言うなよ と言ってミユキのことを話はじめた

[まあ、2,3回ホテルいったら面倒くさくなりそうだったんですぐに切りました]

と言った それから店長はミユキとの行為を生々しくニヤケながら語った


ミユキは本気で店長の事を好きなのに…

僕はこみあげる怒りの感情に身を任せて店長の髪の毛を鷲掴みにして………と、いうことはできるはずもなく、ただ店長の話をヘラヘラ笑って聞くしかなかった

最低だ…店長

そして、今後の人間関係を気にして好きな娘が侮辱されてるのにヘラヘラ聞いている僕も最低だ…


最悪な気分でやった麻雀は僕のボロ勝ちだった


次の日、僕はミユキを呼びだして告白をした

ミユキは

[でも、私、店長のこと…]

といって僕から目を背けてよそ見をしたミユキの唇を僕の唇でふさいだ


僕とミユキは翌日にバイトをやめて、バイト先の居酒屋に就職するのもやめた

大学4年からもう一度はじめた就職活動はなかなか大変だったけど、地元の企業ではなく東京の企業に何とか就職先が見つかった

4月から勤めることになった就職先の研修で1日だけ東京に行くことになった

研修は1時間くらいで終わる予定だったので、そのあと東京で遊ぶためにミユキに一緒にいくように誘った


東京に行く前の日にミユキを呼びだして、ネックレスをプレゼントした 

そして

[今はまだ答えなくていいから聞いて 僕はまだネックレスしかあげられないけど、東京で就職してお金が稼げるようになったら、このネックレスを指輪に変えるから、そのときは付き合ってほしい]

と言った

ミユキが何かを喋ろうとしたから、僕はミユキの唇を僕の唇でふさいだ

研修が終わって、遊びにいこうと2人で電車に乗っていたら、綺麗なお姉さんに

[ネックレス絡まっているよ]

と言われた

生まれてはじめて女の子にあげたプレゼントが次の日に絡まってしまった現実に僕はとても悲しくなって、2人は上手くいかない運命なのかな と思ってしまっていたら

[ちょっと貸してみて、私、こういうの得意だから何とかできるかもしれない]

と、ネックレスが絡まっている事を教えてくれたお姉さんが言った

お姉さんは絡まった部分をほとんどほどいでくれて、もうすぐ終わるというところで手を止めた

お姉さんは手を止めて、次の駅で降りるからごめんね

と言った

その顔はとても神々しくて僕は思った

僕達がお姉さんだと思っていた人はすべてがわかっていた天使だったのかもしれない

東京のJR総武線には天使がいるのかも知れない


天使は 

あとの残りは自分達でやりなさい

最後の最後は自分達で運命を切り開きなさい

というメッセージで最後の絡まっている部分だけ残してほどいてくれた そう思いながら僕は天使に手を振った


東京で指輪を買えるお金が貯まったら、僕とミユキの絡まった運命をほどく 

そして 口をふさぐ のではなく 口づけ をするんだ

そう天使に誓った夏の日だった

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この作品は片想い文芸部に参加しています

今回のお題は よそ見 です


そして今日書いた作品は 

ゆりゆりこさんの

恥部と総武線とポメラ

というエッセイから着想を得て書きました



着想というか妄想に近いですね

ゆりゆりこさんが、書いたエッセイの登場人物を勝手に短編小説にしちゃいました


いい大人が平日の昼間から他人のエッセイの登場人物でラブストーリーをつくるのはどうかしてると、一瞬、躊躇しましたが なんのはなしですか で

人の作品なのに

というノリをやってる人がいたのを思いだして勇気をもらって書いちゃいました

まずは、ゆりゆりこさんのエッセイを読んでくれると嬉しいです


では、失敬🌊🌊🌊


あっあと、これを気に入ってくれた人は

もう一つだけふざけないでラブストーリーを書いたのがあるので

も読んでくれたら嬉しいです

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