陰ながら、ハゲながら、努力する私と民主主義ではない理容室
こんにちは、岩男です
私は最近、髪の毛をのばしていました
それは、娘に
ねえパパ、 ハゲるのはパパの勝手だけど、それならせめて髪の毛をのばしてよ
と言われたからでした
私はハゲながら髪の毛をのばしてみました
なんとか、娘にカッコいいと思って貰えるようにハゲをなるべく目立たないように陰ながら努力していました
陰ながら、ハゲながら、努力しました
しかし、努力も虚しく、だんだん落ち武者みたいになってしまいました
これはまずいということで私は昨日、理容室にいきました
私は最近、家からそんなに離れていない場所に値段が2000円の理容室を発見していて、次に髪を切るタイミングでいってみようと思っていました
ちょっと外装は古いが、2000円で家から割と近いなら、今回次第で常連になる可能性がありました
店に入りました
今、どこかにキンタマをぶつけたの? と問いたくなるくらいの角度に腰がひけている店主が
「いらっしゃいませ」
と言いました あいさつのために開けた口は歯が少なく見えました
後期高齢者だ‼
私は直感しました
そして、腰はキンタマをぶつけて引けていたのではなく、単純にデフォルトとして曲がっていたのでした
まあ、後期高齢者でも、キンタマをぶつけていても、腕が確かならいいさ と思い、私はソファーに座って順番を待ちました
ソファーに座った私は、となりに座って待っている客をなにげなく見ました
後期高齢者だ‼
私は直感しました
となりの客の肌の質感、顔のシワの様子、そして平日の昼から理容室に並んでる様子から、私は直感しました
まさかと思い、私は視線を今、髪を切って貰っている客に向けました
後期高齢者だ‼
私は直感しました
おじいさんだか、おばあさんだかわからないけど、髪の毛の色が 全部、白 という様子を見て私は直感しました
白髪混じり ではなく 全部、白 は後期高齢者に多く見られる髪質でした
この店は図らずとも、後期高齢者+後期高齢者+後期高齢者VS岩男の構図になっていました
多数決を採用していたならば、私も後期高齢者になってしまうところでした
民主主義は恐ろしいです
なんとか多数決による後期高齢者を免れた私の順番になりました
私は
「サイドは3ミリくらいで刈り上げて貰って、上はかなり短めにに切ってください、あとサイドは角刈りにならないように角を丸くしてください」
と言いました
まあ、コレさえ言えばどこにいってもだいだい同じ仕上がりになる簡単な注文でした
店主は
「顔ソリどうします?」
と言いました
顔ソリなしだと1700円、顔ソリありだと2000円だとのことでした
私は、普段は床屋では顔ソリまでお願いすることが多いのですが、店主の腰の曲がり具合にちょっと不安を感じたので、今日は顔ソリなしの1700円のコースを注文しました
サイドをバリカンで刈り上げました
その際に店主は刈り上げがスムーズに進むように私に髪留めクリップをつけました

そして、片方の刈り上げが終わって髪留めクリップが必要なくなったときに、私は信じられない光景を目にしました
もう片方の刈り上げをするまでの間、一時的に不必要になった髪留めクリップを店主は
自分の耳の上に乗せました
タバコやボールペンを耳の上に引っかけるアレです
まじかよ‼それ、反対側を刈り上げるとき、私に使うんだろ⁈
店主は自分の耳に髪留めクリップをのせたまま、私の髪を切り始めました…しかし、手が震えています…
何が一番怖かったかと言うと、手が震えているのに
切るスピードがめちゃくちゃ速いのです
見たことないくらい上下にクシとハサミを揺らしながら、ものすごいスピードで私の髪を切っていきます…その間もずっと手が震えています
時折、激しく揺れるクシが頭皮にささり激痛が走ります
しかし、動くわけにはいきません
動いたら確実に耳をイカれる…と思っていた私は痛みに耐えました
ようやく反対側の刈り上げになりました
店主の耳の上のクリップは私の髪に装着され、一時的に不必要となったクシは店主の耳に収納されました
刈り上げが終わりました
左右の刈り上げの高さが全然違います
店主はなぜか私の頭を洗いはじめました
えっ?刈り上げの高さが左右違うし、まさか、上をまったく切らないで終わる気か⁈
そんなわけないと思いながら私は
「あの、すいません、上をかなり短めにお願いしますと言ったと思うのですが…」
と言うと店主は
「そんなこと言ったって、アンタ、頭のカタチが変だから、上を切ったらツンツンにたっちゃうよ」
と言いました
初対面、しかも客の立場で頭のカタチが変だと言われた私は、失礼すぎて、ちょっと面白くなってしまいました
私は笑いを堪えながら
「ツンツンになっても大丈夫ですので、切って貰って良いですか?」
というと
「次からは、いきつけの床屋にいってくださいよ」
と言いながら切ってくれました
不機嫌になりながら、明らかに雑な感じで、ものすごいスピードで切った髪は奇跡的に刈り上げの高さが揃っていました
怒った方が上手いのかよ
と思った私は、またも笑いそうになってしまいました
店主は当然、もう1度髪を洗ってくれることなどはなく、バサバサっと数回、私の頭をひっぱたくように払い
「終わりましたよ」
と言いました
最後にひっぱたかれたことでニヤニヤが隠せなくなった私に店主は
「1700円です」
と言ったのですが、私は
(面白かったから)2000円払いますよ
と笑顔で言いました
「いや、顔ソリなしなんで1700円です」
と言われましたが
「切りなおして貰ったので2000円払います、そのかわり、また来て良いですか?」
と笑顔で言いました
店主は途端に満面の笑みを浮かべ
「もちろんです、是非お待ちしてます」
と言いました
2度とはいかないけど、最後に後期高齢者の温かい笑顔を見れた、そんな木漏れ日のような休日でした
