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詩集 18才とあの街の最期

    「部屋」

    生きる理由はないよ
    僕はただこの部屋に帰ってくる
    きみと手を繋いでいるときも
    ひとりスーパーの帰りも
    鍵を開けて脳へとつながる

    このベットで風を浴びて文字を書いていると
    干からびて死ねると思う
    それも悪くない

    どうか忘れてしまえばいい
    母も父もきみもぼくも
    太陽の出入りを繰り返し
    浮かぶ涙を蒸発させること

    それでもご飯をたくのかい
    それでもあの子をだくのかい
    つなぎ止めた生命に快楽を覚えて
    朝日を浴びる

    「電車」

    走り去る風景が苦しくて
    上手く息が吐けない
    下も向けずに窓を眺めた

    揺られるキャンバスに
    人を単純な丸として描いた
    ビルを四角として重ねた

    風景と車両の摩擦音を
    平筆に乗せて色付けた

    窓に写る微光の集団と
    そこにある絵の具の感触を
    触れて確かめようと思った

    「僕を僕だと言えぬこと」

    指先に集まる血液
    蠢く脈の振動が
    関節を震わせる

    焦燥や愛憎は
    何処かの果てからやってきて
    母のお腹に忍び込む

    泣いて
    祟って
    理解する

    僕を
    僕だと
    言えぬこと

    「帰り道」

    橋の上

    冬の酸素が僕に刺さって
    皮膚が滾る

    水面が鳴いている

    僕は問うた

    川は孤独か
    木々は孤独か
    僕は孤独か

    夜を掴んだ手のひらと

    冬の酸素が僕に刺さって
    皮膚が滾る

    「僕はまた」

    顔に似合わず
    熟れたその目は僕を見た

    焦った
    言葉を発した
    あなたのためだと嘯いた

    瞼を閉じたあなたは僕の言葉を咀嚼して
    声は徐々に掠れていった

    僕の耳に鼓動が届く

    収まった頃
    あなたは言葉を飲み込んで
    敵る心を隠し笑った

    僕はあなたのうしろを見ていた

    「煙と地面」

    気だるげな足音達が
    くるまの排気と息をして寒空の下僕は舌を鳴らす

    落ちてた紙パックをつぶした
    通りすがりの妙な歩き方を真似た

    珍しく人気の無い路地を歩いた
    いやな匂いに天を仰ぐ

    視界に入ったグラフィティが
    異様にダサくて口角が上がる

    コンクリートに煙が這っている
    試しに僕は地面を消して
    ぎこちないスキップをする

    「布団」


    潡情とリズムに心臓を重ね
    湿った足底で舞う
    錆びた鉄骨のフロア

    腐ったミラーボールが
    漂う埃に反射して煌めく

    汗と空気が肌で混ざる
    崩れた夜の視界が揺れる
    私は私の音を拾う

    「影のあしあと」

    街灯の明かり
    のびた影の僕と二手に別れた

    ほどけた雪に足跡が残る

    明日には
    春風がやってきて
    みんな溶かしてしまう

    きっと忘れて
    僕は元居た道をゆく

    「あいす」

    体温にそまる
    皮膚や頬

    とろけた身体は
    こぼれ落ち

    僕をつたい

    憂いた手のひらを
    甘く熱した

    その手で僕は
    背を占めた

    臥したあなたの
    息

    「白川夜船」

    月の光が心臓を象って
    川のほとりに落としていった

    小船を漕ぐあの子が
    別人のように見えて

    僕は不思議と笑みを零した

    時折 古びた木の音が
    あたりの草花と会話する

    いつもの冗談を
    あの子は言っていた


     
     

    雪跡

     
     
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