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春の行進 シロクマ文芸部

    めい

    小牧部長の今週のお題
    『三月は』からで始まる話です。
    よろしくお願いいたします。

    ———————
    三月はMarch 。もうすぐ春と一緒に行進するんだ。
    今年の行進曲は『オモチャのチャチャチャ』が選ばれた。僕達オモチャはそれだけでウキウキしている。

    今年の春との待ち合わせ場所は7歳の女の子、春子ちゃんの机の上だ。
    オモチャのチャチャチャの曲に合わせて、僕達オモチャが春を先導する。それが僕らの役目。今年も何事も無く無事に春を先導できますように。

    行進の先頭はラッパを鳴らす僕ら鉛の兵隊達。次に現れるのはフランス人形。これは定位置になっている。後から様々なオモチャがランダムに続く。

    フランス人形の衣装は毎年同じ。少しくたびれた花のドレス。彼女は思うのだ。今年こそ新しいドレスを着てみたいと。だけど誰にも打ち明けた事はない。ワガママだとは思われたくないから。でも、僕には分かるんだ。


    その夜、春子ちゃんは絵の具を出しっぱなしにして寝てしまった。いくつかの絵の具のキャップも開いたままだった。
    僕達が春子ちゃんの机に到着した時、フランス人形のドレスは黒の絵の具で汚れてしまったのだ。フランス人形はあまりの事に泣き出した。仲間達は何もできずオロオロするだけ。

    そこに現れたのは春子ちゃんのお祖母ちゃん。春子ちゃんの様子を見に来たのだが、一目見るなりお祖母ちゃんは全てを理解した。
    お祖母ちゃんは春がどこからどんな風にやって来るのか、ちゃんと知っていたし今年の春の訪れがここからに決まったことも耳にしていた。ちょっと不思議なお祖母ちゃんだ。

    お祖母ちゃんは自分の部屋にフランス人形を連れて行った。
    しばらくしてお祖母ちゃんは彼女を連れて戻って来たよ。
    フランス人形の衣装は新しくなっていた。
    レース付きの青いドレスに白いリボンが結んである。フワフワのスカートは二段になっていてとても素敵だ。
    フランス人形もドレスに負けないくらいの素敵な笑顔。

    「やれやれ、間に合ったね。春子のせいでドレスを汚してごめんよ」
    「いいえ、私がもっと気を付ければ良かったです。それにこんなに素敵なドレスを作ってくださってとても嬉しいです。春子ちゃんにもお礼を言いたいです」

    「さぁ!そろそろ夜が明けるよ」
    お祖母ちゃんが声をかけた。その声が聞こえた様に春が現れた。
    「皆さん、今年も元気に素敵に行進しましょうね」
    春の登場に拍手が起こる。


    お祖母ちゃんは一人で春の行進を見送ったのでした。いつまでも手を振りました。
    そして思うのです。大勢の人にこの春の行進の意味を是非知って欲しいと。
    誰もがみんな幸せでありますように。そんな願いが込められた春の行進なのですから。
    それにしても春子ちゃんのお祖母ちゃんはいったい何者なのでしょうね。


    了 1,078文字




    #シロクマ文芸部
    #三月は
    #小説
    #ショートストーリー


     
     
     

    めい

     
     
    2023年5月に古希を迎えました。普通のオバアですがお付き合いくだされば嬉しいです。 高齢ではありますし、行き届かないところが多々あると思いますがどうぞよろしくお願いいたします。 めい

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