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Photo byエドゥアール・マネ / メトロポリタン美術館

日々の小景(13) 169.9

     169.9 

      あぁ、またか
      二年連続だよ、まったく

     55歳になって背が伸びるとは思っていないが、1mmくらいどうにかならないものだろうか? と怒りを覚える。だが、どこにぶつけるべきかが分からない。計測器は自分の役割を果たしているだけなのだ。どう考えても自己責任以外の何もでもないので、受け入れて苦く笑うしかない。もう少し顎を上げれば170cmだったかもしれないのに…。激しく後悔しても後の祭りだ。
     以前は170.1もしくは170.2だったので、年齢を重ねて縮んだのだ。
     冷静になれば、髪が薄くなったからという説も考えられる。いずれにしても加齢による。重ねて、加えても減ってしまう。

     もちろん、身長を聞かれたら170cmと答える。
     四捨五入すれば170cmなのだから、嘘ではないのだが、どことなく気分は晴れない。170.1の170cmと169.9の170cmは微妙というより大きく違う。たぶん、他人からすれば、そんなことに興味はないから、どうでも良いのだろうけれど。ついでに、もう時効だと思うので自白すると、170.1の時は切り上げて171cmと言っていた。
     つくづく自分の器の小ささに嫌気がさす。
     でも、「169.9」は「三苫の1mm」に匹敵するくらい僕にとっては大きな問題である。と思ったところで、サッカーであれば「アウト」であると気づく。1mm足りないのだから「ノーゴール」なのだ。

     という訳で、これからは身長を聞かれたら169.9cmと答えると決めた。

     会社の健康診断で身長を気にしている55歳はあまりいないだろう。周りはみんな血圧や体重及び腹囲を気にしている。そう考えると、むしろ健康体であることに感謝すべきなのかもしれない。

     二年連続で169.9cm
     あと1mmで170cmなのに
     絶妙に残念な僕の人生みたいだ

     ここまで書いて思ったのだが、170cmと答えるよりも、169.9cmと答えた方が印象に残るし、話のネタになるのではないか?
     物事は考えようだ。落ち込まずに開き直ってみよう。

     と書きながら、僕は豆乳をやめて牛乳を飲み始めた。
     たかが1mm、されど1mm。
     55歳のどうでも良い挑戦は続く。来年の健康診断の結果をお楽しみに!

     
     
    コロナ禍以降、50歳を過ぎてから詩を書き始めました。 日本現代詩人会会員。ネット詩誌『MY DEAR』同人。詩誌『冊』同人。

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